「地元民の了承と納得」を前提に実現可能性のない候補地乱発を粛々と進めていけば、米軍駐留の可能性があるとされてきた場所は、沖縄の地図上でことごとく「ノー!」の赤ラベルが貼られることになる。
民主主義という“御札”を他国侵略の口実にして延命してきた米国が、世界中が注視する中で、「オール拒絶」という沖縄の民意を無視して普天間飛行場の県内移設をゴリ押しできるはずはない――鳩山首相がそう考えて沖縄地図を「拒絶の赤一色」に染め上げ、グアム以外の選択肢を潰そうとしているのであれば、実に戦略的な交渉術である。
もっとも、米国議会と対峙するオバマ大統領との間に何らかの意思疎通がなければ、「解」はあらぬところに流れていく。沖縄米軍基地の返還問題が日米間にくすぶり続け、「問題」として維持されることを望む勢力は少なくないからである。
首相に前述の筋書きがあるとしたら、日米両官僚たちを飛び越えた「政治の直接対話」が不可欠だ。小沢幹事長の5月訪米が突然見送りとなったなかで、はたして鳩山民主党は5月末までに、直接対話で返還問題にケリを付けられるか。まさしく正念場である。
※すべて雑誌掲載当時
(AP/AFLO=写真)