3日後の4月4日、今度は朝日新聞が「基地膨張 グアム苦悩」と一面トップで報じた。大見出し横には「沖縄米海兵隊の移転先」という白抜き文字が目立つ形で打たれ、「米領グアムでは基地拡張でサンゴ礁の保全が危ぶまれている」という“ニュース”を伝えている。自国沖縄の自然破壊よりもグアムのサンゴ礁が気になるようだが、リードには「沖縄の米海兵隊の相当数が引っ越す先として決まっていたはずの米領グアムで」とさりげなく付記されている。「本紙ではこれまでにもすでに伝えてきたように」という“アリバイ証明”の科白が聞こえてきそうなトリッキーな文面だ。
これまでろくに報じてこなかった普天間問題の主題を、今頃「実は核対策」という呆れるような理屈で取り上げたり記事にまぶすことで、膠着した記事展開を打開しようと巧妙な仕掛けを画策した――読者にそう理解されても仕方のない記事だろう。いまだに出口を見出せない読売が、どのような策を講じるかは見物だが、問題はこれらマスメディアが、いったいどのような背景で、こうした読者=国民を混乱させるような報道を続けているのか、ということだ。
戦後の日米安保と同改定、沖縄返還などの過程で、外務省による密約の隠蔽・隠滅が行われてきたことがいま明らかになりつある。それは官僚が政治を支配する実態そのものである。
政府筋情報の主な出元は、米側との協議の最前線にいる外務省高官。米側の「意向」は外務省を通じて政権与党に伝えられてきた。外務省は必要に応じ、記者クラブにも情報を流す。この「制御された情報」が伝えられる様こそ、官僚による情報操作そのものだ。ゆえに、現在の情報錯綜がもともとは外務省発であることが容易に推測できる。
そもそも外務省は、戦後の日米関係の中で、米国の意向を与党政治家に“翻訳”する責務がある。微妙なやりとりや重要事項伝達の過不足を随意に添削し、日米間の協議と交渉に関する“翻訳権”を占有してきた。
しかし、移設先は当初の現行案から離れ、落としどころが難しくなってしまった。火傷を恐れる外務省は、候補地選定には直接関与せず、“翻訳権”の死守だけに神経を張り巡らせ、守りの構えで静観している。