次々と消される“グァム移転”以外の選択肢

最近こそ開放され始めたが、記者クラブに籍を置くマスメディアは、米国の意向を独占的に受け、随意に勘案し、それを政治家とマスメディアに伝える外務省の立場と似ている。情報を独占する権限そのものが保身と存立の命綱であるため、マスメディアは外務省に、外務省は米国に従属しがちになる。

日米同盟の重要性は、周囲の心配以上に両国首脳が理解しているはず。(AP/AFLO=写真)

指針であり情報源でもある外務省が移設問題を静観すれば、彼らに情報を依存してきた記者たちが路頭に迷うのは当たり前だ。慌てふためいたマスメディアは、他のリーク情報を競って報じるしかない。現在の情報錯綜は、この混乱が表面化したものでもある。その罪深さや情けなさ以前に、そうしたメディアの有り様に危機感を覚える沖縄県民は少なくないだろう。

それにしても、まだ政府方針でも何でもない候補地がリークされ、消化不良のまま次々に垂れ流されている。しかも寝耳に水の地元ではあちこちで騒動が起きている。これをどう見るか。

核持ち込みを巡る日米密約問題に詳しい、琉球大学の我部政明教授はこういう。

「日本の民主党政権が一生懸命に新たな移設候補地を探してみた。その努力の結果、やはり現行案が一番だったことを示せばよいのだと米政権は想定している」「(日本側が)真剣に取り組んだ検討であることを示すことです。それが米国議会に理解してもらえれば、グアムでの基地建設費に対する理解が深まり、建設費の承認へとつながると見ていると思います」

メディアの迷走は前述のように理解すれば納得できるが、とても実現するとは思えない候補地の情報を乱発して、案の定、内外から反発され、にもかかわらず漏洩元への厳重注意もなく、さらなる候補地情報が流される。筆者には、まるで鳩山政権が実現可能性なき候補地を意図的にメディアに露出させ、わざと騒動を煽っているようにも見える。