「お母さんが働いているスーパー、すごいね」
【櫻】従業員さんは社長と副社長が動画投稿しているのを見て、どう思っているんでしょう?
【竹】温度差はかなりありますね。SNSにまったく興味がないという人もいます。でも、身近な人から「見たよ」と言われると実感するようです。
【櫻】たとえば?
【竹】50代のパートさんが「娘から、『たけだのTikTok見たよ』って連絡がありました」と嬉しそうに報告してくださったんです。詳しく聞いてみると、上京した娘さんとその話題がきっかけで話が弾んだそうです。「お母さんが働いているスーパー、すごいね」って。今までは「変なことやってるな」と見られていたのが「社長たちはすごいことをやってるんだな」と思ってもらえるようになったんです。
【櫻】竹田社長自身はSNSでの投稿はやりたいことだったんですか?
【竹】一番の目的は「伊万里市にこんなに面白いスーパーがある」と知ってもらいたかったんです。「日本一面白いスーパー」とキャッチコピーを付けたのは2019年のことですが、以前から「ファインズたけだは面白い」という自信があったんです。前社長だった母もユニークなアイデアを持っていて、それをどんどん露出していったらきっと注目されるに違いない、と。
【櫻】そしたら実際に面白いことがどんどん起きた。
【竹】でも、発信する情報やコンプライアンスには気を付けないと、と思っています。Instagramでリールを始めたばかりの頃、失敗があったんです。
【櫻】と言うと?
【竹】芸能人のゴシップをネタに動画を投稿したとき、フォロワーさんからコメントをいただいたことがあるんです。「大好きなお店なのにこんな風にして目立つのはちょっと悲しいです」と。
【櫻】それは胸に刺さりますね。
【竹】ええ、深く反省しました。それを機に他のアイデアを考えるようになって、店内放送でマイクパフォーマンスをするアイデアを思い付いたんです。
【櫻】失敗から新しいアイデアが生まれたんですね。
【竹】店内放送のマイクパフォーマンスは人気コンテンツです。本来、地元の人しか知らないはずのスーパーマーケットにSNSを通じて全国にファンができました。このご縁を活かして、全国のみなさんにも私たちの商品を届けられるようにライブコマースを検討しているところです。
【櫻】ファンは応援する人や自分が好きなお店から買いたいですからね。
【竹】今考えているのはカタログギフトを使った通信販売です。実は、ファインズたけだは「味の直行便」というカタログギフトの販売数が全国600店の中で夏冬3年連続日本一なんですよ。そのため、売れ筋商品やおすすめ商品のデータが蓄積されています。そのノウハウを使ってオンライン販売を始めたいと考えています。
【櫻】今は「誰から買うか」が重視される時代です。「こんな人たちがつくっているんだ」「こんな人が売っているんだ」と人柄や背景、ストーリーが伝わるから欲しくなるんですよね。
【竹】私たち小売業界が直面している問題は地域住民の方々、ひいては日本全体の人口減少です。これから資金を投じて実店舗を増やしていくよりも、自信を持って販売できる自社商品を全国の方に向けてPRし、販路を拡大したいと思っています。
【櫻】素晴らしい! SNSをきっかけに全国展開が始まるんですね。
●
ファインズたけださんの話で特に驚くのは、スーパーをめがけて県外からもお客さんが集まるところ。SNSを通してたった一軒のお店が「地域活性」にまで役立てる。そんな可能性を感じるお話でした。
TikTokアカウント:日本一面白いスーパーファインズたけだ
フォロワー:27.6K
いいね:755.5K
TikTokデビュー:2020-11
YouTube チャンネル登録者数:2360人