「頑張って」を「死ぬしかない」に変換するうつ病者の心理

心の悩みから「死にたい」といっている時は励ましていいのですが、相手がうつ病だったら、原則的には励ましてはいけません。「頑張って!」とついいってしまいがちですが、うつ病の人は落ち込んでいるので「皆が頑張れというのは私がだらしないことがわかっているからなのだ。皆の声援にも応えられない私はダメな人間だ。やっぱり死ぬしかない」と自殺につながります。

近年は、励ました方がよい新しいタイプのうつ病「新型うつ」「5時までうつ」も登場していますが……。

ハイとうつを繰り返す躁うつ病(双極性障がい)

躁うつ病は、優性遺伝といわれていますが、精神科で扱う病気です。躁期とうつ期を繰り返すタイプとうつ期が大きく出るタイプ等、いろいろです。

躁の時期は気分がハイの状態で、何でも積極的に動き、とても元気です。これなら誰でも躁になりたくなりますが、やはり病気なので困ることも出てきます。気が大きくなって、お金のことなど考えずにどんどん買物はするし、人のことなど考えずに自分勝手に行動して周囲の人がとても迷惑します。

数カ月から数年経つと、今度はうつの時期に入り、家に閉じこもって何もしないで死ぬことばかり考えるのです。家族は目が離せなくて大変です。

カウンセリング
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内科の診療所にも時々、躁うつ病の患者さんがやって来ます。長い間軽いうつ病だった女性が、インフルエンザの高熱が続いた後、急に躁病になってしまいました。50代でまっ赤な洋服を着て、世話になっているからと大きな胡蝶蘭の鉢を持ってきました。その人は女手ひとつで3人の子供を育て、子供達は就職したもののお金の余裕なく生活しているのを私は知っていましたから、そんな無駄遣いをするなといいたかったのですが、そんなことをいったら大変です。「私の好意が受けられないの⁉」と大剣幕になってしまうからです。子供たちから話を聞くと、マンションを買う契約をしてしまったり、子供たちの会社に菓子折りを配ったり、夜遅く知人に電話をして食事につき合わせたりと大騒動になっていました。

サラリーマンの奥さんでも、1カ月の給料を1日で使ってしまったりするので家族は振り回されてしまいます。

ところが、うつになると、沈み込んで何でも自分が悪いと思い込んでしまうのです。自分を責めに責めるので死にたくなってしまいます。この時、励ますと大変です。しかしこの“励まさない”というのはなかなか難しいことです。