「20代後半~50代が危ない」砂糖の取りすぎは要注意
③生活習慣が乱れている
働き盛りといわれる20代後半~50代は特に、過労、慢性的なストレス、睡眠不足や運動不足、偏った食事といった生活習慣の乱れなどが原因で病気にかかりやすくなり、明らかに成人食物アレルギーが出やすくなります。
中でも気を付けなければいけないのは、偏った食事です。特に、砂糖の取りすぎが、アレルギーの発症・増悪(病状がさらに悪化すること)に関係していることは、私の長年の診療経験からして紛れもない事実です。実際に、甘い菓子を食べる習慣をやめたところ、長年悩まされていた鼻炎や咳などのアレルギー症状がほぼ完治した患者さんをたくさん診てきました。
ではなぜ、砂糖を取りすぎるとアレルギー症状が悪化しやすいのか。そのメカニズムについてはあまりよく分かっていない面もありますが、その1つとして、ブドウ糖を代謝する時に、ビタミンやミネラルを消費してしまうことが考えられます。つまり、砂糖の摂取によって大切なビタミンやミネラルが奪われて欠乏を招き、健康な体を維持するのに栄養の面で圧倒的に不利になってしまうのです。
また、砂糖を取りすぎると、それを好む微生物(カンジダ菌など)が腸内で増えすぎて細菌バランスが崩れ、アレルギー反応を引き起こす可能性が考えられるだけでなく、全身のさまざまな疾患の炎症反応を悪化させてしまうことも分かっています。
砂糖が多く使われる菓子などを間食としてたくさん食べてしまうと、それだけでおなかがいっぱいになります。その結果、本来体にとって必要なたんぱく質、ビタミン、ミネラルといった栄養素を摂取する食事がおろそかになり、日々のバランスのとれた栄養摂取という点からも大きな問題です。
「1日ティースプーン6杯分」甘いものを控えて健康に
最近では、ブドウ糖よりも果糖のほうが体にとって害になっているのではないかという報告も増えています。果糖が体の中で代謝され、アレルギーの炎症を悪化させる物質ができることを多くの論文が挙げていますが、これらの関係を直接的に示したものはまだありません。
トウモロコシのでんぷんを加水分解して得られたブドウ糖液を、さらに甘い果糖液に変化(異性化)させた「異性化液糖(別名高フルクトース・コーンシロップ)」という液体甘味料があります。果糖の含有率が50%以上90%未満のものを「果糖ブドウ糖液糖」、50%未満のものを「ブドウ糖果糖液糖」と呼びます。
甘味がさわやかで砂糖よりも口の中に残りにくく、低温でも甘味度が増し、低コストでつくれるため、ソフトドリンクや冷菓の他、パン、調味料、缶詰などにも広く使われています。パッケージにも、原材料名として表示されています。欧米でも、異性化液糖を含んだフルーツジュースなどをたくさん飲む人にアレルギー疾患が多いという報告がいくつか見受けられます。
世界保健機関(WHO)は、2015年に「成人及び児童の糖類摂取量」を発表しました。このガイドラインでは、成人および児童の1日あたりの遊離糖類摂取量を、エネルギー総摂取量の10%未満(1日50g未満)に減らすようにすすめています。さらに5%まで減らして1日25g(ティースプーン6杯分)程度に抑えれば、健康効果はより増大するとしています。遊離糖類(free sugars)とは、単糖類(ブドウ糖・果糖等)および二糖類(砂糖、ショ糖)のことです。
また、遊離糖類の摂取量をエネルギー総摂取量の10%未満に抑えれば、肥満や過体重、虫歯のリスクを減らせる明確な証拠があるとされています(食品安全委員会ウェブサイト、『Guideline: Sugars intake for adults and children』World Health Organization 2015)。アレルギーの発症・増悪予防という点から、砂糖をどの程度厳密に避けるべきなのか、その具体的な数字はまだ明らかになっていません。
砂糖は、さまざまな加工品に使われていて、摂取を完全にゼロにするのはむずかしいかもしれませんが、なるべく控えたほうがいいことは間違いないでしょう。