2007年に銅像を郊外に移転させようという動きが盛り上がったのですが、その途端、エストニア政府は、正体不明のハッカーによって猛烈な攻撃を受け、国内が大混乱する事態に陥りました。犯人は、明らかですね。ロシアによってサイバー攻撃を受けたのです。

この時点でエストニアはすでに電子立国でしたから、その影響が大きかった。この出来事をきっかけに、エストニアはハッキングされない安全対策をとった本当の意味での超電子立国を目指すようになったのです。

ネット上に電子政府をつくった本当の理由

現在、エストニアでは、さまざまな行政サービスが電子化されています。特に注目なのは、ネット上に「電子政府」をつくっていることです。しかも、エストニアの国民以外にも「電子居住権(e-Residency)」を与えるという政策をとっているのです。

電子居住権取得者になると、エストニアの電子政府のシステムを利用することができます。企業の設立・運営、納税や電子署名を国外からも行えます。だから、エストニアに投資したり会社をつくったりしやすいでしょう。

こういった外国からの投資や企業誘致を促進するのがエストニア政府の狙いなのです。でも、電子政府をネット上につくった目的は、それだけではありません。

もし将来、エストニアがロシアによって占領されたとしても、電子政府のデータをバックアップしておけば、いつでも再出発できて、結果的に国民を守ることができる。

「電子政府」をつくった理由は、ロシアによってエストニアが支配されても、また復活させるための安全対策、ということなのです。

ロシアへの警戒は間違いでなかった…

プーチン大統領は、ソ連の崩壊について聞かれた時に「地政学的な悲劇である」と発言しています。

地政学的悲劇とはどういうことか。ソ連は、バルト三国をはじめ15の共和国でまとまった大国だった。ヨーロッパの国と戦争になっても、ロシアの周りに緩衝地帯となってくれる共和国がたくさんあった。ところがソ連崩壊で、共和国がそれぞれ独立し、ロシアは国境で直接敵からの攻撃にさらされてしまうことになってしまった。

プーチン大統領の思いを代弁すれば、こんなところでしょうか。

プーチン大統領の執務室には、初代ロシア皇帝ピョートル大帝の肖像画がかけられているそうです。プーチン大統領には「過去の栄光よ、再び」という思いがある。ということは、領土拡大の野心があるのではないかと、かつてソ連に支配されていた国々は警戒しているのです。

エストニアが電子立国になった背景には、ロシアへの強い警戒心があったのです。その危機意識が間違いでなかったことが明らかになったのが、今回のロシアのウクライナ侵攻だったといえます。

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