自分の価値はすべて「言葉」で作られている

ビジネスにおいて自分の身体から発するものはすべて「投資」されていくことに気づいたわけです。

もちろん、世の中には、不思議と時代に合っていない慣習がたくさんあります。学校や会社やあらゆる場面でそれらは私たちを戸惑わせます。

そんな時は、言葉の原義を調べて吸収してみましょう。それでもなお、その言葉に抵抗があるなら、自分なりにアレンジしてみるのもいいでしょう。それがあなたの「味」として評価される土壌がある組織ならば、上司や相手は最初、おかしなやつ、と訝しがるかもしれませんが、貫けばいわゆる「新人類(ニュータイプ)の変人」として認めてくれるかも。あるいは、もっとフランクな組織に転職する、という手もあるでしょう。

しかし、どんな企業に行こうが起業しようが、あなたの言葉から始まる提案や企画が、価値を生むのか? それを投資してビジネスを拡大できるか? は常に問われるのです。

では、言葉が投資対象であるなら、その価値はどう決まるのでしょう。

儒教の基本経典「五経」の一つである『礼記らいき』にはこう記されています。

「王の言ことは糸の如ごとし。そのづるやりんの如し王の言は綸の如し。その出づるやふつの如し」(『礼記』)

王の発言は重く、最初は生糸のように細くても、口から出れば組み紐のようになる。最初は組み紐のようでも、口から出れば太い綱のようになる。

勝浦雅彦『「伝わらない」は当たり前 つながるための言葉』(光文社新書)
『つながるための言葉 「伝わらない」は当たり前』(光文社)

確かに王の発言は重い。国家の枠組みを宣言する、戦争をする・しないの決定発言などは、国の浮沈を占うような言葉ですから、言葉の巨額投資の最たる例でした。このように、ともすれば言葉の重み=価値は、社会的地位やその組織での立場によって決まると思われがちです。

だから、組織で重要なポストにいない人間はつい「自分の言葉なんて軽いものだ、価値の低いものだ」と思い込みがちです。

ですが、時代は変わり、縦割りの組織はフラット化して現場の意見を吸い上げ、意思決定のスピードを速める方向に進んでいます。

少なくとも現場の声を聞かない、若手の意見を軽んじる、という組織はこれからの世紀を生き残ることはできないでしょう。あなたの言葉には価値があるのです。