Aさんは、ハウツー本だけではあまり効果がないと感じ、わらにもすがる思いで今度は話し方を変えてみたり、資格を取ってみたり、スキルアップのコミュニティに参加してみたり……。様々なことに手を出して、とにかく「解決策」を見つけようともがきます。

ですが、職場に戻るとどうもうまくいかない……。そこで今度は、一世を風靡ふうびしているキラキラ系キャリアの人や、インフルエンサーが出した本を手に取り「自分もこんな風に人生を楽しめたらいいなぁ」と物思いにふけり、悩みをほったらかしにして、どんどんこじらせていきます。

悩みの根本原因を突き止めることが最優先

でもある日、「さすがにこのままじゃダメだ!」と、Aさんは知人のBさんに悩み相談をすることにします。でも、相談されたBさんもまた、Aさんの悩みに向き合うことはせずに、過去の自分の体験談を「解決策」としてそのままAさんに押しつけてしまいます。

もちろんBさんに悪気はありません。

その結果、AさんはBさんに、相談に乗ってもらった感謝を述べつつも、心の中では「Bさんのアドバイスはちょっと今の私の状況には当てはまらないんだよな……」「でも、今の状況を正確に伝えられなかった自分も悪いし……」などと思ってしまい、「Bさんの時間を使わせちゃって悪かったな。今後はこういった悩みを誰かに相談するのはやめておこう」となってしまいます。

……こうして、Aさんの悩みは誰からも向き合ってもらえず、居場所を失うのです。

AさんもBさんも、Aさんの悩みと向き合わずに、悩みを解決することを急ぎ、すぐに正解を求めてしまいました。けれども、違うのです。正解とは、正しい問題設定があって、初めてその対として出てくるものなのです。

問題をよくわかっていないのに正解を出そうとしても、うまくいかないのです。良い結果になることもたまにはあるかもしれませんが、それは単なるまぐれ当たりで再現性や持続性はありません。

だから、正解を求める前に、まずは問題が何かを明らかにする必要があります。つまり悩みに向き合い、悩みの根本原因を突き止める。これがとっても重要なのです。解決策を考えるのはそれからです。

オフィスビルで外を見ているビジネスマン
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悩みの根本原因を解き明かす糸口

悩みの根本原因を突き止めるために必要なこと、それは、常日頃から「自分は何者なのか」を把握しておくことです。

自分はどういう人間で、何に喜怒哀楽を感じ、どんな強みと弱みを持ち、何を大切にして生きていきたいと思っているのか。そのように「自分らしさ」を深く理解してこそ「なぜ自分はそのことについて悩むのか」と考えることができ、悩みの根本原因を解き明かす糸口が見えてくるものです。

……ですが、そんな人がいるのでしょうか?