しかし、変動型や短期固定はリスクが大きいローンといわざるをえない。変動金利ローンは金利が上がっても返済額が5年間変わらないため、金利上昇に気づきにくいが、返済額のうち利息に回る額が増え、それだけ元金の返済にあてられる額が少なくなる。金利が急上昇すれば、返済はしていても元金が減らず、利息ばかり支払う状況になることもある。

また、多くの銀行では住宅ローンの金利割引をしており、返済中の人が負担しているのは基準金利(店頭で公表されている金利)から一定幅で割り引かれた「適用金利」だ。2008年くらいまでに借りた場合、変動型では当初5年間、短期固定では当初固定金利期間、金利の割引が大きく、当初期間が終了すると割引幅は縮小されるものだった。そのため金利の見直し時期に適用金利がアップし、同時に基準金利が上昇すれば、「割引幅の縮小分+基準金利上昇分」のダブルパンチとなる。

金利が上がれば返済額が増えるし、さらに残高が多いほど返済額の増え方は大きくなっていく。つまり、変動金利ローンと短期固定ローンは、金利上昇(返済額アップ)の危険が隠れた「地雷型ローン」なのだ。

かといって長期固定型でも安心はできない。旧住宅金融公庫(現住宅金融支援機構)や年金住宅融資などのローンは、11年目から金利が上昇する「段階金利制」で、当初の金利が2%台でも、2010年あたり3.5~4%程度にアップするケースが少なくない。返済額が増えるのはもちろん、割高な金利を負う「時代遅れローン」なのである。

さらにほとんどの人が返済中のローンは、60歳以降も返済が残る「老後圧迫型ローン」でもある。35歳で35年返済のローンを組めば、完済時期は70歳。60歳時点では1000万円以上の残高が残ることも多い。現役を続けるとしても、収入ダウンは必至。退職金に大きな期待は持ちにくいし、老後のために資産を残す重要性も増している。

このように、住宅ローンは「きちんと返済できている=安心」と断言することなどできないのだ。まずはご自身の住宅ローンの内容を正確に把握し、リスクを認識することが重要である。そのうえで、「どんなローンにしたいか」を考え、見直しに着手したい。

「金利はまだ上がらないから大丈夫」と高をくくりがちだが、金利が低い今だからこそ、別のローンへの借り換えなどによってリスクをヘッジすることが可能なのだ。金利が上がってからでは、もう手遅れである。

※すべて雑誌掲載当時