「FIRE」を語るのに欠かせない「4%ルール」の由来
アメリカではこの「FIREムーブメント」を語る時に、必ず「4%ルール」(または「25倍ルール」)というものが出てきます。年間の生活費(年間支出)の25倍の運用資産を築き上げてしまえば、あとは「年率4%」の運用益で生活費をまかなえると考えるのです。
年間の生活費(年間支出)が仮に240万円なら、6000万円の運用資産を築き上げておいて、あとは毎年「年率4%」で運用していけば、(6000万円×4%=)240万円の運用益を得られるので、それで生活していけば、運用資産の総額はずっと減ることなく、一生働かずに生活していける、という考え方です。
では、ここでなぜ「年率4%」という運用利回りを前提にしているのかというと、アメリカの株式市場における代表的な指標である「S&P500」が、第二次世界大戦後の75年間の長期的な平均で、「年率7%」で上昇してきたという事実と、その同じ期間に物価上昇率が「年率3%」だったことを根拠として、株式市場に投資しておけば、差し引きで(7%−3%=)「年率4%」の利回りが誰でも得られるはずだ、というのです。
「投資さえしていれば総じて利回り年率4%」なわけがない
しかし、株式投資のことを多少は理解している私に言わせていただければ、こんな仮定は、あまりに乱暴だと言わざるを得ません。ちなみに、私も株式市場への投資は大賛成。それどころか、株式投資による資産運用を大前提としてしか、目標とする「60歳でのハッピーリタイア」は実現できないと断言します。
しかし、この「4%ルール」(または「25倍ルール」)は乱暴すぎます。その根拠のうちでも主なものを以下に列挙してみましょう。
1 正確な数値はわかりかねますが、「4%ルール」が日本にも当てはまるとは限りません。
2 アメリカでさえ、「過去はそうだった」というだけで、株式市場が未来永劫7%で成長するとは限りません。
3 株式投資による資産運用の成果(年率の利回り)は、長期的な平均値でも、個人差が大きいのが実状です。平均値でも「マイナスの人もいれば10%以上の人もいる」というのが実状なので、「株式市場に投資さえしておけば、(物価変動調整後で)総じて『年率4%』の利回りが期待できる」などという仮定は、おへそがお茶を沸かしてしまいそうです。
4 また、この「4%ルール」(または「25倍ルール」)は、株式譲渡益課税と配当課税という「税金」を無視してしまっている点も、非現実的で、荒削りすぎます。