「訪問→提案→クロージング」突破率を計算すると…

さて、冒頭の例に戻りましょう。

二人の課長の意見は、以下のプロセスで判断することになります。

・顧客へのアプローチ数、実際にアポが取れた数、提案を検討してもらった数などのデータを集める
・それぞれの「壁」の突破率(コンバージョン・レート)を計算する
・その率に合わせて、自社の「ファネル」を導き出す

ここでは単純化するため、仮に営業を「訪問→提案→クロージング」の三つのステップで行っているとしましょう。

仮に、それぞれの壁の突破率が50%だとすると、以下のようになります。

・訪問成功率(50%)×提案成功率(50%)×クロージング成功率(50%)=商談成約率12.5%

8回トライして成功するのは約1回。仮に100人の顧客に案内を行ったとしたら、成約するのは12件か13件。思ったより低いと感じた人も、意外と高いと思った人もいることでしょう。

突破率50%ずつということで、これを「555ファネル」と呼びます。

ではまず、熱血課長の「アポを倍にする」施策を取ると、どうなるでしょうか。

200件×訪問成功率(50%)×提案成功率(50%)×クロージング成功率(50%)=25件

当たり前といえば当たり前ですが、成約数は倍になりました。

一方、理性的な課長の「クロージング率を倍に」だと、どうなるでしょうか。

100件×訪問成功率(50%)×提案成功率(50%)×クロージング成功率(100%)=25件

訪問件数を2倍にしても、クロージング成功率を2倍にしても、結果は同じ25件。計算力のある人なら「当たり前じゃないか」という話です。

この結果を受ければ、「A課長の言うこともB課長の言うことも同じ」というのが答えとなります。

クロージング成功率100%はありえない

しかし……ここで冷静になって考えてみてください。どれだけ提案力を上げるトレーニングを積んだところで、「クロージング成功率が100%」になることなど、あるでしょうか。いくら素晴らしい営業トークを編み出したとしても、不確定要素は必ず発生します。突然トップの方針が変わった、思わぬ出費で予算が尽きてしまった、など……。

また、営業にはどうしても向き不向きがあります。どんなに営業ツールや商品力を磨き上げても、それをうまく伝えられなければ意味がありません。「なんとなく相手のことが気に入らない」という個人の好みで決まってしまうこともしばしばあります。