台風委員会が140個の名前リストを用意している

というわけで、台風の名前に人名を使っていたのは1999年までで、2000年以降からは命名方式が変わりました。アメリカ人の人名は日本やアジアの国々にとってはなじみが薄いため、アジアの人々の防災意識を高めるためにもアジア名をつけようということになったのです。また、アジア名をつけることでアジア各国・地域の文化を尊重して連帯を強めるという目的もあります。

このアジア名を命名しているのは、台風委員会です。台風委員会は台風による災害を減らすために1968年に設立された国際組織で、日本を含む14の国と地域で構成されています。

台風の名前は、台風委員会の加盟国・地域が各10個ずつの名前を出しています。そして合計140個の名前をリストにして並べ、発生した台風順に命名しています。141個目の台風はふたたびリストの1番目の名前が命名されるのです。

なお、このアジア名もいわゆる「国際名」と呼ばれるもので、船舶や航空機などへの予報や学術論文などの国際的な情報に主に使われていて、国内向けの情報は各国が独自に名付けた台風の名前を使っています。ですから、日本でも引き続き「台風○号」という番号方式の命名は続いています。

日本が出した名前はすべて星座名由来

アジア名には、文字数が多すぎないもので発音しやすいもの、ほかの国の言葉で感情を害する意味を持たないものなどの条件があります。要するに、「アホ」とか「バカ」はダメということですね(ちなみにアホはスペイン語でニンニクのこと、バカは同じくスペイン語で牛のことです)。ほかの国では動植物の名前や神様の名前、地名や物語の登場人物などがアジア名として使われています。

日本から出している名前は、「コイヌ」「ヤギ」「ウサギ」「カジキ」「コト」「クジラ」「コグマ」「コンパス」「トカゲ」「ヤマネコ」の10個です(2022年4月現在)。

これらの言葉の共通点は何でしょうか?

答えは星座名です。なぜ星座名なのかというと、固有名詞ではなく気象現象の名前でもないから、そして自然の名前なので利害関係が発生しにくいから、台風と同じく空にあって人々に親しまれているからという理由が挙げられます。「コンパスって日本語だったっけ?」「なんでイヌじゃなくてコイヌなんだよ」とツッコミを入れたくなりますが、そういった事情がわかれば納得ですよね。