オーストラリアでは市民がサイクロンに命名できる

ちなみに、インド洋と南太平洋で発生するサイクロンに関しては、発生する場所によって命名する組織が違うようです。北インド洋の場合はインド気象局がサイクロンの命名を担当し、名前は南アジアや中東の13か国が提案しています。こちらは台風と似たような方式といえます。

そして、南インド洋や南太平洋などのオーストラリア付近の場合はオーストラリア気象局が命名を担当し、人名をつけています。こちらはハリケーンと似たような方式です。ちなみに、面白いことに、オーストラリア付近のサイクロンにつけられる名前は、一般市民からのリクエストを受け付けています。ただし、オーストラリア気象局のホームページには、「リクエストがものすごく多いので、必ずしもリクエストが通るわけではない」「通ったとしてもサイクロンに命名されるまで10年以上かかる」という注意書きもあります。

台風の名前は「引退」することもある

このような台風のアジア名は、ときには引退することがあります。台風が大きな災害をもたらすと、そのアジア名は引退して、かわりの名前がリストに加わることもあるのです。

ヤシの木で、ストーム
写真=iStock.com/Sergey Gordienko
※写真はイメージです

たとえば冒頭であげた「ハイエン(中国名でウミツバメの意味)」はフィリピンでおびただしい死者を出したことから引退しました。そして、2019年に房総半島で大規模な停電を引き起こした台風15号の「ファクサイ(ラオス語の女性の名前)」と、同じ年に多摩川流域での氾濫をもたらした台風19号の「ハギビス(タガログ語で「素早い」の意味)」も引退しました。

同じ名前が再び命名されてしまうと、「え? あの大災害をもたらした台風がまた来るの?」と混乱してしまいますよね。これは台風に限らず、ハリケーンもサイクロン(インド、オーストラリア両方)も同様のルールです。

また、これまではアジア名について説明してきましたが、台風は気象庁からも命名されることがあります。特に国内で甚大な被害をもたらすと、地名などがついた名前がつけられるのです。

たとえば、1954年の洞爺丸台風や前述の伊勢湾台風などがこれにあたります。2019年の台風15号と19号も甚大な被害が発生したため、前者は「令和元年房総半島台風」、後者は「令和元年東日本台風」と命名されました。このように気象庁が命名することは1977年以降なかったため、いかにこの2つの台風の被害が大きかったかがうかがえます。

このような命名のルールを知っておくと、台風情報にもっと興味を持てるようになるのではないでしょうか。次に台風が発生したら、ぜひアジア名にも注目してみてください。

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