なぜ昔の台風は女性名が多かったのか

こうした台風の名前は、かつては「カスリーン台風」のように女性の名前でした。これは、北大西洋と北東太平洋、中央北太平洋に発生するハリケーンの命名方法にならったものです。

なぜ女性の名前なのかは諸説ありますが、アメリカの空軍や海軍の気象学者が、彼らの妻や恋人の名前をつけて親しみを込めて呼び始めたという説が有名です。その後、男女平等の観点から1979年以降は男性と女性の名前が交互に使われるようになりました。

現在のハリケーンの名前は世界気象機関(WMO)が作ったリストから命名されています。リストの内容はハリケーンの発生するエリア(北大西洋、北東太平洋、中央北太平洋)ごとに違いますが、大西洋の場合はAから始まるアルファベット順で、Q、U、X、Y、Zを除外した21個の名前リストがあり、その年に最初に発生したハリケーンにAから始まる名前がつけられます。

さらに1年で22個以上ハリケーンが発生した場合は、Aから始まる追加の名前リストから命名されます。ただしこれは2021年からの話で、2020年までは追加の名前が必要になった場合は「α」や「β」などのギリシャ文字がつけられていました。

WMOによる2021年のハリケーン名リスト(編集部作成)
WMOによる2021年のハリケーン名リスト(編集部作成)

1999年までは台風もハリケーン式命名法だった

北西太平洋と南シナ海で発生する台風に関しては、1999年まではハリケーンの命名方式にならってアメリカの米軍合同台風警報センターが人名をつけており、それが国際的な報道の分野から学術論文にまで使われてきました。

とはいえ、日本では人の名前の台風は戦後すぐのものというイメージが強く、比較的最近まで人の名前がついていたことを知らなかった人も多いのではないでしょうか。実際、私は1978年生まれですが、物心ついてから成人するまでの台風に人名がつけられていたことは知らず、もっぱら番号でしか台風の名前を認識していませんでした。

実は、気象庁では女性の名前を国内の情報に使ったのは1953年の台風2号までで、それ以降は船舶や航空機などに向けた国際的な予報や資料にのみ人名を使っていたのです。ただし、1972年までアメリカの占領下にあった沖縄では、本土よりは長い期間、アメリカ流の人名が浸透していました。