ウォルターズは米議会での証言で、ロシア軍はウクライナ国民の「心に恐怖を植えつける」ことに失敗したと指摘した。だがDIAの高官は、ウクライナはロシアのこれ以上の侵略を阻止することはできるかもしれないが、「ドンバス地方のルガンスクとドネツクをロシア軍が掌握している現状を覆すことはできないだろう」と言う。

「もはやこの戦争で誰も勝者になり得ないなか、今週の一連の殺りくはとりわけ愚かなものに感じられた」とこの高官は語る。「一方がどこかでわずかな戦果を勝ち取れば、もう一方がまた別のところでわずかな戦果をもぎ取っている。だがどちらも、相手を完全に圧倒することができる状況にはない。この戦争にはもう何も残っておらず、ただ無実な一般市民が板挟みになっているだけだ」

ゼレンスキーはテレグラムに投稿した2つ目のメッセージの中で「もちろん、さまざまなリスクがある。当然ながら、我々に対して戦争を仕掛けてきた国の代表の言葉を、信用する理由はない」と述べた。つまり「事実を検証せずに信じることはない」ということだ。

DIAの高官は、「バイデン政権は、この戦争の終結に向けた方針を何も持ち合わせてないように見える」と言う。「戦争犯罪を追及するのもいいだろう。ロシアの撤退を求めるのもいいだろう。だがこうした幻想のような方針以外の何かがあるのだろうか。私たちは、戦争の終結を促すためだけに支援を行っているのではない。停戦協議を意義あるものにするためにできることもたくさんあるはすだ」

当記事は「ニューズウィーク日本版」(CCCメディアハウス)からの転載記事です。元記事はこちら
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