欧州連合(EU)は3月2日、ロシアへの追加の経済制裁として、ロシアの7つの金融機関を「SWIFT(国際銀行間通信協会)」から締め出すと発表した。この経済制裁にはどれだけの効果があるのか。元HSBC証券社長の立澤賢一さんは「今回の制裁には抜け道が多く、期待されているような破壊的ダメージは与えられないだろう」という――。
SWIFTのロゴ
写真=EyePress via AFP/時事通信フォト
2022年2月27日、SWIFTのロゴ(ブリュッセル)

岸田首相と日本政府はロシアに対抗する「リーダー」

2月27日に、アメリカ・ホワイトハウスのサキ報道官が出した「声明」が、さまざまな方面に波紋を広げています。

声明の中で、岸田首相と日本政府を「プーチン氏のウクライナ攻撃を非難するリーダー」と表現していたからです。

原文では「Prime Minister Kishida and the Government of Japan have been leaders in condemning President Putin’s attack on Ukraine」となっています。

「have been」と、現在完了進行形が使われているので、「リーダーであり続けてきた」といったニュアンスが感じられます。

アメリカがこのような形で日本に言及するのは非常に異例なことで、何らかの必ずしもポジティブではない「意図」が込められているように思ってしまいます。

通常、日本の総理大臣は、就任後すぐ訪米し、アメリカ大統領との会談に臨みます。しかし、岸田首相は昨年10月に第100代内閣総理大臣に就任して以来、いまだにバイデン大統領との直接会談を実現できていません。

バイデン大統領と会えない表向きの理由は「コロナ」ですが、果たしてそうなのか、疑問が残ります。

真偽不明の「情報」が世界を飛び交っている

「米中貿易戦争」開始以降、アメリカは「反中」を掲げています。一方、日本政府には親中派の議員が多くいますし、経済界には、中国依存型のビジネスモデルを構築する企業も多数あります。

それを踏まえると、アメリカが日本をあえて「ロシアと対抗するリーダー」と表現したのは、「皮肉」か、はたまた「対中国のように、ロシア問題で弱腰になるなよ」と「釘を刺す」のが目的ではないか。そう勘繰ることもできそうに思います。

「日本はアメリカの期待に背くのではないか」。

ホワイトハウスが日本政府にそういう不信感を抱いているからこそ、この「異例の声明」が出されたとも解釈できるのです。

私は、今回の「ウクライナ危機」の本質とは、「情報戦」ではないかと考えています。

ロシアには「ハイブリッド戦」という概念があります。これは、正規軍同士の戦闘以外に、ゲリラなど非正規軍の活動や、工作活動、サイバー攻撃などを含めた戦争を指しています。その一環として、ロシア側からもさまざまな「情報」が流されています。