実際に、ロシアがウクライナに実弾攻撃開始する前まで、ロシアからのエネルギー依存度が高いドイツは、SWIFTからロシアを排除する案に賛同していませんでした。

とはいえ、「建前」として、何かの制裁をしなければならないわけです。そのため、見た目には強硬手段に見える「SWIFT遮断」を決定しながらも、あえて「抜け道」を残しているという風に、今のところ見えるのです。

「ロシア制裁」で漁夫の利を得るのは中国

大手メディアには、「SWIFT遮断」はロシア経済に破壊的なダメージをもたらす、という論調も出ています。

もちろん、SWIFT遮断はロシアにとって痛手ではあります。しかしながら、ここまでご説明しましたように、その影響は少なくとも「破壊的」とは言えないと思います。

むしろNATOが軍事的手段を取れない中、「やってる感」の演出のために使われているという風に見ることも可能です。

仮に、百歩譲って「SWIFT遮断」によってロシア経済が大打撃を受けたとしても、それはまたもう一つの「悩ましい問題」を呼び起こすことになりそうです。

それは、「中国が漁夫の利を得る」という問題です。

「SWIFT遮断」により、ロシア産天然ガスの輸出が大きく減少すれば、ロシア経済にとって打撃となります。ただし、その際は、おそらく中国がロシア産天然ガスの「最後の買い手」となるでしょう。

中国は制裁対象のイランから原油を買っていた

そう判断し得る前例があります。

2018年に、イランに対して「SWIFT遮断」が実施され、イラン産原油の輸出に大きな影響がありました。しかし、そのイラン産原油を、マレーシア経由で中国が買っていたと言われています。

もちろん、国際社会の大多数の国々が「ロシア非難」に染まっている中、中国としてもあからさまにロシアの肩を持つことはできません。

それに、ロシアと中国の間には稼働しているパイプラインが1本しかないという物流上の問題もあります。

一方、中国はオーストラリアとの関係が悪化し、やはりエネルギー不足に悩んでいます。

それを考えると、経済制裁により買い手がなくなったロシア産天然ガスを、中国が肩代わりする可能性は、十分すぎるほどあると考えられます。