SWIFTを使わなくても資金移動はできてしまう

西側諸国と対立するロシアは、中国の国際決済システム「CIPS」を使うことも可能です。

そもそも、SWIFTとは「送金の仕組みそのもの」ではありません。あくまで、「資金移動の情報をやり取りする仕組み」です。

同じ国の銀行の間で、資金を移動させる場合は、中央銀行を通すことになります。日本には「日銀ネット」という仕組みがあり、各銀行が日本銀行に持っている「日銀当座預金」を介して、資金を移動させています。

一方、国境を越えて資金を移動させる場合は、日本銀行に該当するような機関がありません。ではどうしているかと言いますと、「コルレス銀行」という存在を通して、資金のやり取りをしています。

つまり、資金移動そのものはコルレス銀行間で行われており、SWIFTはその資金移動の情報をやり取りしているだけなのです。

そのため、SWIFTを使わなくとも、銀行間決済をすることは「理論上」可能です。ただし、送金の事務が大幅に増えるため、貿易を停滞させる可能性は高いです。

ルーブル紙幣
写真=iStock.com/Coprid
※写真はイメージです

「天然ガスの輸入だけは何があっても続けたい」

そして3つ目の理由が、西側諸国にとって最も厄介な問題になります。

それは、「ロシアを世界経済から遮断すると、西側諸国が大打撃を受ける」という点です。

プレジデントオンラインでの記事(「むしろ米国にとって好都合」バイデン大統領がウクライナを助けない本当の理由)でも触れたように、ヨーロッパはロシア産天然ガスに依存しています。

急激な「脱炭素化」で、ただでさえエネルギー不足に陥っている上に、ロシア産の天然ガスがストップしてしまえば、ヨーロッパ諸国は大混乱に陥るでしょう。そのため、天然ガスの輸入だけは何があっても続けたいというのが、ヨーロッパの「本音」なのです。

もしアメリカが「すべてのロシア銀行をSWIFTから遮断」するよう求めたとしても、ヨーロッパが反対する可能性が高いのです。