なぜ、わざわざ移住してわが子を通わせたいのか

人気の秘密は、同校が「ICT(情報通信技術)教育」「英語教育」「プログラミング教育」「21世紀型スキル教育」「問題解決型教育」など、さまざまな先進的教育に取り組んでいるということ。特にICT教育に関しては、創立3年目にして日本教育工学協会から「学校情報化先進校」に認定されたほどで、全国的に注目されており、文部科学大臣や学校関係者が引きも切らず視察に訪れる。

ロボットがゴールするまでのタイムを競う。思い通りに走ってくれずプログラムを修正中。真剣だ。
撮影=岡村智明
ロボットがゴールするまでのタイムを競う。思い通りに走ってくれずプログラムを修正中。真剣だ。

取材の日も、教育関係者が視察に来ていた。我々もまず、プレゼンテーション用の大型モニターが8台ほど並ぶ大きな教室に案内された。ここで、大勢の知らない大人たちを前に、児童生徒たちが普段の学習の成果をプレゼンするのだという。

トップバッターは4年生男子。まずは、「安全な水とトイレを世界中に」というタイトルの動画が始まる。画面の中のメインキャラクターが「世界には飲み水をみにいくのに1時間以上かかる国もある」というところから説き起こし、世界に存在する水をめぐる問題を、クイズやゲームの要素も取り入れながら、楽しく解説していく。動画が終わったところで、「スクラッチというプログラミング言語を使って作りました。10時間ぐらいかかったかな。題材はSDGsから取りました。『海のゴミ』についての動画を作っている友達もいます」という説明があった。4年生らしからぬ、堂々とした発表ぶりである。

6年生のプログラミングの授業。
撮影=岡村智明
6年生のプログラミングの授業。

続いて6年1組の4チームが、マインクラフトを使って作った「地球にやさしい街づくり」について発表。ソーラーや水力発電でエネルギーを作り、建物の外壁部分は植物によるグリーンカーテンで省エネを図る、屋上はニンジン畑にするなどのアイデアが、3D画像を使ってわかりやすく表現されていた。

次に、8年生、6年生、4年生2人による「みどりの学園義務教育学校」の紹介プレゼンテーションが始まった。音楽祭や体育祭での学年を超える絆、地域の人たちとの交流などなど。ICT教育の紹介部分は、なんと英語で説明してくれた。よほど優秀な子供たちが選ばれたのかと思いきや……。

「この電子黒板を使ったプレゼンは、うちの学校の児童生徒、全員ができるんです。順番制で担当が決まっています。1年生の時からプレゼンコンテストも行っているので、みんなよくしゃべりますよ。ははは」(毛利校長)

プレゼンテーションの場面に限らず、確かにこの学校の子供たちはよく話す。毛利校長と校内を歩いていても、生徒や児童がいろいろと話しかけてくる。

生徒が自主的に手書きしている学校名のぼり。開校以来、伝統になっている。
生徒が自主的に手書きしている学校名のぼり。開校以来、伝統になっている。(撮影=岡村智明)

「校長室はいつでも誰でも自由に入れるようになっています。子供たちがしょっちゅうやってきては、あれこれ話していくんですよ。わが校の校名が墨書された旗が並んでいますが、1期生の習字の得意な生徒が『私に書かせてほしい』と申し出てきたことをきっかけに伝統になったものなんです」(毛利校長)

いつでも、誰にでも自由に自分の意見やアイデアを開陳することができるという風通しのいい校風が、創立4年目ですでに醸成されているようだ。

プレゼンテーションが進んでいくその脇で、別のモニターを使って3年生が数人、何やら話しながら、PC操作を始めた。聞いてみると、このあと2年生に遊んでもらうために自作したゲームの最終調整を行っているのだとか。

しばらくすると2年生の集団が先生に連れられて入ってきた。面白そうなゲームを前に大喜びの2年生たちに、優しく丁寧に操作方法を教えている。

「毎年行っている秋祭りが新型コロナで中止になってしまったので、代わりに3年生が作ったゲームで2年生が遊ぶというイベントをやっているんです」(毛利校長)