生きていることのリスク

放射線被ばく以外にも、発がんを含めて健康に影響を与える要因は多数存在し、それらは複雑に絡み合い、その影響を相乗的に増加したり、単独のリスクを実感しにくくしたりします。

誤解のないように書き添えますが、他のリスクとの比較も、生きていること自体のリスクも、放射線被ばくのリスクを過少に評価してほしいから述べたものでは決してありません。不幸にも原発事故が起こり、放射線被ばくも、避けることができないリスクの一つに仲間入りしてしまいました。そうなってしまった以上、既存のリスクと同じように正しく理解し向き合わなければなりません。リスクを評価する場合に、それが不幸な経緯で押しつけられたものであることを気持ちの上で重要視しすぎると、客観的な姿勢が崩れてしまうこともあり得ます。大変難しいことですが、新しく加わった放射線というリスクと正面から向き合うためには、やはり、めいめいが正しい情報を得て、理解し、「自分で決めて」いかねばならないのです。

ほどなく震災から一年が経ちます。

低線量放射線被ばくを含む健康リスクについて、広い視野、科学的な思考のもとに、正しく捉える考えが広がってほしいと心から願っています。

次回はここまでのまとめとして、原発事故を契機に放射線が身近な存在になった日本のビジネスマンの方々がグローバルに活躍するに際し、この問題をどうとらえ、どう発信すればよいかという国際社会との関係について記したいと思います。