近時、電機業界で統合・再編が加速している。三洋電機とパナソニックの資本提携、富士通HDD事業の東芝への売却、シャープ亀山工場の中国メーカーへの売却検討などは、横並びのビジネスモデルが改められるべき局面であることを示唆する。

わが国製造業の多くはこれまで、外需とりわけ米国への輸出を頼みに成長してきた。近年の不況期には「選択と集中」を標榜して合理化を進めたが、米国依存の一本足打法は改まらなかった。昨今における業績落ち込みの根源は、まさにこの点にあると考える。

米国の牽引でグローバル経済が拡大する図式が崩れた現在、企業は抜本的に戦略を見直す必要に迫られている。冒頭のような合併・再編が、世界規模で増えることも予想されよう。

このような状況下、企業が生き残るための条件は何か。急がれるのは、この不況を契機に、事業ポートフォリオを最適に組み替えることである。

隣国韓国で民生用電機機器メーカーはサムスン、LG電子の2グループに集約されている。一方、日本では8社が縮小する国内市場でシェアを奪い合っている。これではグローバルで対抗する体力は養われない。各社がコア事業を明確にして、一層の「選択と集中」を進める必要があるだろう。

こうした改革を行う際、最も重要なのはスピードである。ライバル企業よりも一足早く改革を進め、事業ポートフォリオをスリム化し、財務面に余裕を持たせることで、攻めに反転した際にリーダーとなることができる。

それでは改革スピードを上げるにはどうするべきか。前回4月13日号で触れたコーポレートガバナンス改革が、重要な契機となりうる。

ペンタックスを統合したHOYA、米原子力大手を買収した東芝、米バイオベンチャーを傘下としたエーザイなどは、国際的にガバナンスが高く評価されている。トップダウンによる大胆な意思決定を、透明かつ厳格な監督体制が支えている好例といえよう。

社外取締役の義務付けが嫌気されるなど、委員会設置会社の普及は進んでいない。しかし同制度の本旨は、経営陣に対する大幅な権限委譲である。グローバル競争に勝ち抜く武器として、わが国企業には再考を求めたい。