リーマンショック以降、米国型のコーポレートガバナンスに対する批判が強まっている。しかし私には必ずしも間違っていたとは思えない。エンロン事件以降、米国企業は内部統制の改革を進めたが、リスク管理は手薄だったということではないのか。

リターンを追い求める以上、相応のリスクをとるというのが、資本主義の大原則である。米国企業は金融工学を過信した結果、リスク管理に失敗したのだと考えられる。リターンを最大化しようとする米国型ガバナンスの方向性が誤っていたわけではない。

むしろ問題は「米国がくしゃみをすれば、日本は大風邪をひく」という日本の現状である。脆弱な経営体制を改善せよという株主の圧力は、さらに強まるのではないか。次の株主総会シーズンはガバナンスが争点となろう。

バブル崩壊以降、日本では社外監査役や委員会設置会社が制度導入されるなど、コーポレートガバナンスの強化が図られてきた。財務すなわち株主の視点から客観的に企業活動をチェックし、よりグローバルな資本主義にマッチした経営体制を導入しようという機運が、一時的に盛り上がった。

しかし2004年以降の景気回復局面において、そのような機運は薄れてしまった。事実、全上場会社の中で委員会設置会社に移行している会社は約2%しかない。結局、失われた十数年の間、日本のガバナンス体制は何も変わっていないとも言われかねない。

では今後、日本企業にはどのようなことが求められるのか。それは株主の視点を上手に取り入れることである。 もちろん、株主の言うことを何でも聞けということではない。現在の難局を乗り越えるには、中長期を見据えた経営が求められる。短期的な収益の偏重はよくない。その際に株主の視点を取り入れ、財務的な面から戦略を検証してもらうことは有用だろう。

昨今、資本市場は四半期決算を重視する傾向にある。中長期的な経営を考えるうえでのマイルストーンならばよいが、四半期決算が自己目的化し、経営が目先に左右されるべきではない。

必ずしも義務づける必要はないが、財務指標を明示した中期経営計画を株主に問うことを、全上場企業は真摯に検討するべきだと私は考える。