化学業界を世界的に見ると、メガケミカルやオイルメジャーがますます存在感を高めている。ダウ・ケミカル(米)、BASF(独)、ロイヤル・ダッチ・シェル(英蘭)、エクソン・モービル(米)、サウジ・アラムコ(サウジアラビア)といった面々だ。対する日本勢は大手でも2兆円前後の売上高にすぎず、規模の面で劣勢である。

そこで前回挙げた、コモディティ、スペシャリティ、環境問題への解決策という3つの観点から、日本の化学業界の活路を考えたい。答えはずばり、大型合併などの業界再編である。

これまで日本の化学産業はスペシャリティ分野の技術を必死に磨いてきた。太陽電池やリチウムイオン電池などのエネルギー関連、有機ELやLED、水処理といった多くの分野で有望な技術を持つ。ただ、イノベーティブな材料の開発負担は重くなっており、国内で重複する生産設備や開発投資の非効率性が問題になってきた。厳しい業績の中で、もはや切磋琢磨によるイノベーションを期待する余裕も時間もない。

たとえば注目度が高まる自動車向けリチウムイオン電池では、日本勢に対する期待が高まる。太陽電池も含めた電池材料分野において、日本の化学産業は環境問題解決への期待の星である。スペシャリティ分野の蓄積や期待を無駄にしないためにも、技術共有化や協働における業界再編の意義は大きい。

過剰設備の廃棄や得意事業での海外進出で安定したキャッシュフローを確保するなど、コモディティ分野の競争力の向上策も必要だ。大型の業界再編こそが、課題の根本的な解決に導こう。

本来は昨年前半までの好況期に動くべきであったが、何も起こらなかった。今は各社とも、ユーザー業界のパニック的な在庫調整への対処で手一杯のようだ。しかし、今こそ動き出さねばなるまい。系列を超えた再編が起こった他業界と違い、化学業界はまだ財閥内での再編が終わったにすぎない。業績好調で、必要性に駆られなかったのだろうが、化学業界も2009年度は営業赤字へ転落するまでに追い込まれてきたのだ。

ここは市場の期待に応えて系列を超えた再編に積極的に取り組んでほしい。買われる側に甘んじるか、買う側に回るか、残された時間はせいぜいあと1年ほどだろう。