「節税になる」というセールストークを信じて、ワンルームマンション投資に手を出す人が後を絶たない。オラガ総研の牧野知弘さんは「池袋や大塚には住む人が見つからない狭小ワンルームが大量に放置されている。節税目的のワンルーム投資はリスクが高すぎる」という――。
※本稿は、牧野知弘『不動産の未来 マイホーム大転換時代に備えよ』(朝日新聞出版)の一部を再編集したものです。
不動産マーケットの中で異彩を放つ節税目的の不動産投資
不動産投資というものは、投資しようとする不動産について高い知見と分析力、そしてリスクに対する許容力が必要であることに加え、資金調達、運用、そして出口での売却戦略など様々な変数を冷静に見定めていくものである。
とりわけ最近時は不動産が金融商品化された結果、金融マーケットに巣くう凶暴な投資マネーが不動産マーケットの行方を左右するようになっている。彼らは膨大な資金量をバックにしているが、金融情勢によって始終その姿、態度を変える厄介者だ。
したがって、日本の不動産であっても、海外の金利や為替、経済情勢、政治力学、自然災害なども含めての投資判断が不可欠になってくるのだ。
だが、国内で投資されている不動産は、こうしたプロによる荒っぽい売買だけで構成されているわけではなく、素人投資家がなけなしの銭を握りしめて投資しているケースもあれば、中長期的に所有を続けていくビル大家のような存在もある。
いろいろな顔を持つプレーヤーが跋扈する不動産マーケットの中で、とりわけ異彩を放っているのが、節税を目的とする不動産投資だ。
この投資は不動産を持って運用することで収益をあげていく運用益と売却時の売却益だけでなく、節税することで被相続人が相続人に対して、自身の財産を多くの税金を負担することなく引き継がせようとする目的によるものだ。