「自由を奪われている人」への扱いがこんなにも違う

新聞記事以上の情報を私は持っていないが、「脚のしびれ」という訴えを担当した医師が詐病や精神的なものと一蹴してしまうことなくしっかりと受け止め、適切な診断のもと治療につなげたことで大事にはいたらなかったのだ。被留置者も入管施設の被収容者も、同じ「自由を奪われている人」と言えるが、これらの人に対する扱いが、同じ国の中でもこうも違うものなのか。

調べてみると、被留置者には「被留置者の留置に関する規則」があり、その第二条には「被留置者の処遇に当たっては、その人権を尊重しつつ、その者の状況に応じた適切な処遇を行うものとし、いやしくもその権利を不当に侵害することのないよう注意しなければならない」とある。

一方、入管の被収容者については「被収容者処遇規則」があり、その第一条には「この規則は、出入国管理及び難民認定法により入国者収容所又は収容場に収容されている者の人権を尊重しつつ、適正な処遇を行うことを目的とする」と書かれている。

被留置者にも被収容者にも「人権を尊重しつつ」とはされているものの、被留置者に対しては「いやしくもその権利を不当に侵害することのないよう注意しなければならない」との注意書きがつけられている一方、被収容者処遇規則にはその文言がない。ここに着目する私は細か過ぎるだろうか。

人けのない廊下
写真=iStock.com/Shoko Shimabukuro
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ピント外れな有識者会議の提言

今年2月に有識者会議から「入管収容施設における医療体制の強化に関する提言」が出された。最後にこれらについて私見を述べ締めくくりとしたい。

まず庁内診療体制の強化として、常勤医師をはじめとして医療従事者の確保が求められた。その上で処遇担当職員とこれらの医療従事者が相互に意思疎通・意見交換できる体制を整備すべきとされた。次に外部医療機関との連携体制の構築・強化として、地域医療機関との協議会、協定等の締結を検討することとされた。そして医療用機器の整備、職員研修や社会一般への広報活動、外部有識者による検証などによって継続的なフォローアップ体制の構築が必要とされている。

有識者の方々には申し訳ないが、これらを行ったところで問題はまったく解決しない。もちろん体制の整備は重要であるし、最低限これらを完備しないことには始まらない。しかし問題はまったく別のところに存在する。非開示や隠蔽いんぺいそして「外国人を人として扱わない」という組織の体質をそのままに、形ばかりの体制づくりをしたところでまったく無意味だ。