犬や猫の体に大きな負担はかからない

デメリットは、体内(皮下)に埋め込む際に「通常の注射程度」の痛みがあることです。ワクチン接種等の注射針よりも若干太いので、痛みが強いのではないかと考える飼い主も多いようです。しかし最近になり、従来品よりもサイズが小さいマイクロチップが開発され、動物病院に広がりつつあるので、このデメリットは軽減されそうです。

また、犬や猫が保護されたとしても、読み取るためのマイクロチップリーダーがなければ番号がわからず、照会することができません。現在は、全国の動物愛護センターや動物病院、保健所などに常設されていますが、十分とはいえません。今後は普及の拡大に応じて、さらに多くの場所に常設する必要があるでしょう。

犬に注射を打つ獣医師
写真=iStock.com/Fly_dragonfly
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さらに、飼い主にとって気がかりなのは、マイクロチップ装着による健康への影響でしょう。

しかし、その装着が適切に行われていれば、動物の体に負担をかけることはないとされています。特にアレルギーなどの副作用が起きないように、チップの外部には生体適合素材が使用されています。まれに皮下組織内でチップが移動することがありますが、健康や読み取りに影響はないそうです。

また、「診察に問題はないのか」と筆者が利用する動物病院の獣医師に聞いたところ、「装着していてもレントゲンやCTスキャンなど支障なく行うことができます。一定の条件下でMRI画像が乱れることはありますが、診断はもちろん動物の体や番号の読み取りに影響はありません」とのことでした。

先行する海外では義務化に違反すると罰金も

実は、海外におけるマイクロチップの普及は、日本より10年以上も早く進められてきました。欧米を中心に1986年頃から普及活動が行われ、マイクロチップ装着に対する理解も進展しています。フランスやスイス、ベルギー、イギリス、イタリア、オーストラリアなど、既に義務化されている国も多く、違反した場合には罰金等が科せられます。

これまで海外において膨大な装着実績がありますが、現在まで装着後の副作用はほとんど報告されていません。また、外部からの衝撃による破損の報告もありません。健康被害でわかっているものは英国小動物獣医師会による情報で、370万頭以上のマイクロチップ装着実績のうち腫瘍が認められたという2例の報告だけです。

そのため、マイクロチップの安全性は「高い水準である」と世界的に評価されているのです。多くの飼い主が不安要素と考えている健康への影響は、心配のないレベルといえるでしょう。