感じる痛みは通常の注射と同じ程度

マイクロチップは直径約2mm、長さ約8~12mm程度の円筒形の電子標識器具です。電源は不要で、体内に埋め込んだら脱落する可能性は低く、半永久的に使用可能です。

チップごとに15桁の番号(識別番号)が記録されていて、専用のリーダー(読み取り機)で読み取ります。この番号には所有者情報などさまざまな情報がひも付けられ、前述した指定登録機関のデータベースに保存されます。照会することにより、個体識別や所有者情報などがわかるという仕組みです。

チップの埋め込みは、注射針のついたインジェクターやインプランターと呼ばれる使い捨ての埋め込み器で行います。麻酔や鎮静剤の使用はなく、犬や猫が感じる痛みも通常の注射と同等とされています。

埋め込み部位は、背側頸部けいぶ(首の後ろ)の皮下深部が一般的です。チップにはいくつかの規格がありますが、日本国内では、国際規格(国際標準化機構)であるISO11784/5に統一されています。指定登録機関への登録は、この規格のチップに限定されます。

また装着は、獣医療行為として獣医師が行います(2023年からは新たな国家資格となる愛玩動物看護師も獣医師の指示のもとに装着できるようになります)。装着費用は動物病院によりますが、2500~5000円程度が一般的です。

装着後に「マイクロチップ装着証明書」が発行されます。この証明書を添付の上、装着後30日以内に指定登録機関へ登録します。パソコンやスマートフォンなどでのオンライン申請(300円)と、専用用紙による郵送申請(1000円)が可能です。また、登録した情報は、所有者が変わるたびに変更登録が必要となります。変更登録も同様の手数料がかかり、完了すると登録証明書が発行されます。

*この指定登録機関への登録制度は、日本獣医師会が民間事業として行っているマイクロチップ登録制度(AIPO)やその他の民間業者が行っているマイクロチップ登録制度とは異なります。そのため、既にこうした事業者に登録したデータは「移行登録サイト」より無料(令和4年5月31日まで)で移行することができます。

犬猫保有者のマイクロチップ装着・情報登録の流れ(出典=環境省HP「犬と猫のマイクロチップ情報登録に関するQ&A」)
犬猫保有者のマイクロチップ装着・情報登録の流れ(出典=環境省HP「犬と猫のマイクロチップ情報登録に関するQ&A」)

もしもの時にもペットと飼い主がひも付けされる

マイクロチップ装着の最大のメリットは、犬や猫が迷子なって保護されたとき、身元証明が確実にできるので飼い主と再会できる可能性が高くなることにあります。迷子札や鑑札などは首輪ごと外れてしまうことがありますが、マイクロチップであれば脱落することはないからです。

また盗難時には、保護されたとしても自分のペットだと証明するのは困難です。「似ているだけだ」と主張されたら、取り戻すことはできません。しかし、マイクロチップを装着して登録してあれば、自分が飼い主だと証明することができるのです。

災害、盗難などペットの防災の観点からも大切なことといえます。また、確実に飼い主が特定できることから、保護されても他の人に譲渡されたり、殺処分されてしまうというリスクを避けられます。そして、飼育放棄や遺棄など「安易にペットを捨ててしまうことを思いとどまらせる抑止効果がある」と期待されています。