パソコンを皮切りにデジタル機器の薄型・小型化・高性能化が進むとともに、コンデンサーも急速に小型化している。

ルビコン製コンデンサーの一例

「アップルさんとの交渉は、だいたい我々が米カリフォルニア州クパティーノの本社に出向いて、主に技術的な打ち合わせや価格、新商品のプレゼンテーションなどを行います。コンピュータのマザーボード周辺について、CPUを起動する電源関係のデザインをしている方とお話しする機会が多い」(宮原氏)

今は設計も製造も台湾などの企業に投げてしまうメーカーが多い中、「今も少し毛色が違うというか、新しいアイデアを盛り込みながら独自の考え方で設計を進めている印象です。細かいところまでは教えていただけませんが、他社が使わないような低ESRの部品を採用して回路の効率を高めたりしている。エンジニアどうしですから、極端に無理な要求がくることはありませんよ」(同)

半導体のように注目される“花形”部品と違い、コンデンサーや抵抗器は自らは動かぬ受動部品と呼ばれる。地味な存在だが、これなしでは能動部品も動かない。同社は高シェアを誇る“縁の下の力持ち”という手堅いポジションを維持する。

「電子部品はまだまだ日本が強い分野。輸出産業の中で国内生産の比率が一番高いのでは。今は為替レートが海外生産の比重を上げるよう迫っている」(勝山氏)

為替が80円台を維持すれば後は何とかやっていける、と勝山社長は言う。

「我々は72年に海外生産を始めている。開発は日本、生産は海外というのも一つのやり方です。しかし、それは日本経済にいい結果をもたらさない。やはり開発部門と生産部門は、同じ場所で一緒にやっていないと、本当の意味で製造業の水準は維持できません」(同)

逆風に柔軟に対応しつつ、独自の哲学を持ち、技術を磨き続ける。しぶとく生きる彼らに学ぶところは多いようだ。

(撮影=西川修一、小原孝博)