高シェアを誇る“縁の下の力持ち”

「リスト発表直後に某米社購買部長さんと面談したとき、最初にこのニュースが話題になった」と勝山社長。

戦前の長野県は、輸出産業の花形だった生糸の一大産地だったが、戦時中に都市部から移転してきた工場がベースとなって、戦後は電子部品・精密機器と、これまた日本のお家芸の拠点となっている。

同県南部の伊那市も養蚕地帯から様変わりし、現在は就労人口の約7割が製造業の従事者とされる。先のアップル社のリストに載った一社、ルビコンは、52年にその伊那市で操業を開始。現在、従業員数約630人、年商は704億円(10年9月期)。アルミ電解コンデンサーを年に約80億個生産し、世界シェア約7割を誇る。その自信もあってか、「コンデンサーを使わない電気製品はないし、(秘密にしても)使い道はだいたいわかるから」と、取材に応じてくれた。

「日本の電機メーカーさんの主な製品にはほとんどうちのが入っています。アップルさんとは、01年から十数年のお付き合いですね」

と、勝山修一社長は笑顔を見せた。

「当時、ESR(電気抵抗)を従来の約3分の1に減らした画期的なコンデンサーを開発したことが取引の契機です。ほとんどのメーカーさんに紹介しましたが、アップルさんにも非常に興味を持っていただきました」(宮原拓也・技術企画部長)

ルビコン本社

98年のiMac発表で奇跡の復活を遂げたアップル社と、既存品を“全とっかえ”しかねない勢いだったルビコンとの取引はごく自然の成り行きだろう。

「今、iPhoneの充電器一個につき、うちのコンデンサーが3本使われています。iPhoneは従来のケータイより使用電力が多く、家庭、職場、携帯用と従来の3倍の売り上げが期待できる」(勝山社長)