農産品・食料品もグローバル化が進んでいる。世界最大の輸出国は米国、2番目はオランダだ。

オランダの国土は日本の九州とほぼ同じで、農地面積は日本の4割ほどしかない。それでも農業立国として成功した。EU内は無関税で輸出入できるから、安い農産物は他国がいくらでも作る。競争に負ける危機感から、高付加価値の製品に絞ったのが勝因だ。

酪農でいえば、「ゴーダチーズ」という世界ブランドがある。国内で生産される生乳(原料乳)の半分以上はチーズになり、飲用牛乳は5%もない。他国から安い生乳を輸入し、高価な乳製品を輸出して儲けている。

日本の場合は、生乳の半分以上を飲用牛乳にするから、各メーカーの牛乳事業はほとんど赤字だ。生乳の価格や輸入量に国が関与し、競争力がつかないのだ。生乳の輸入がほとんどないから、クリスマスやバレンタインデーの時期にバターやクリーム不足で大騒ぎになる。2015年のバター不足ではニュージーランドなどから約1万トンを緊急輸入した。反対に、21年12月は生乳が5000トンほど余る見通しとなって大量廃棄が問題となった。政府が箸の上げ下げまで指図し、オランダのように厳しい競争にさらされないからイノベーションが起こらない。

食の安全保障条約でリスクを分散させよ

オランダはチューリップなどの花卉(切り花)も輸出量が多い。花はバレンタインデー、母の日など全世界で大量に売れる時期がある。オランダは輸出だけでなく、他の国々が売買するマーケットを設けて成功した。アフリカの国で栽培した花をドイツが輸入するような場合にも、オランダで取引されるのだ。英国のシティが金融トレードの国際市場であるのに近い。

オランダは農業協同組合が株式会社化して農業法人となり、グローバル化していった。フランスのダノンも農協が株式会社化したもので、今では世界の5大食品会社の1つになっている。日本には約560もJA(農協)があるのに、厳しい競争がないからグローバル化するところは出てこない。

個々の農家には、高付加価値化にチャレンジしているところはある。例えば、北海道の大樹町にある半田ファームは、こだわりのチーズやヨーグルトで知られている農場だ。味噌に漬けて育てた「熟成チーズみそ漬け」などは私もよく食べているし、友人にも薦めている。競争力がある農家は、グローバル化しても生き残れる。大儲けするところも出てくるだろう。

農産品のグローバル化が進めば、最適地で生産して世界中に輸出することになる。石油やレアアースと同じ天然資源だと考えれば当然だ。国内で安定供給ができない農産品は、競争力がある最適地の国とがっちり組むしかない。“食の安全保障条約”を結び、日本の農場だと思って生産を頼めばいい。

例えば牛肉、牛乳、乳製品なら、オーストラリアとニュージーランドだろう。どちらも世界最強の競争力がある。