国民栄誉賞モノだと思った2010年の優勝者

POISONGIRLBANDの吉田さんは、こう言っていた。「僕らは、決勝が終わった瞬間から、また来年の決勝を見据えている」なんて息苦しいんだろう。

まるでずっと水中で、息をとめてもがいているようなものだ。夏頃から頑張りました! そんなの努力じゃない。364日頑張って相方とギスギスして、答えのない真実を掴もうとする日々。

笑い飯さんはそれを9年繰り返した。僕からしたら、もはや変態としか思えない。笑い飯さんのことを尊敬しない人なんて一人もいない。

なぜなら自分には絶対にできないことをやってのけたからだ。

優勝するなら審査員にも視聴者にも新鮮な初登場が有利に決まっている。それを9年連続で決勝へ駒を進め続けて、結果、最後の最後で優勝を掴み取る。国民栄誉賞では足りないくらいの偉業だと僕は思っている。

袖から芸人がよく観ていたマヂラブ

記憶に新しい2020年は、マヂカルラブリーが優勝。

いよいよ漫才のレベルが、僕らがネタをやっていた頃とは桁違いのものになってきた。

お世辞でも何でもなく、決勝に進んだ全組が面白かった。審査員はどんなに大変だったろう。マヂカルラブリーもトレンディエンジェル同様、劇場では人気のなかった部類に入る。でも袖から芸人が観る率は高かった。

舞台裏
写真=iStock.com/RoterPanther
※写真はイメージです

逆にお客さんからの人気だけがあるコンビは、袖まで芸人が観に来てくれない。

漫才か漫才じゃないか論争に腹が立つ

マヂカルラブリーがまだM-1グランプリを攻めあぐねていた頃、2018年の単独ライブのタイトルはこれだ。「もうこれで終わってもいい」。これ以上ないくらいの“純文学”なタイトル。

彼らもまた、当たり前のように死ぬ気で努力をし続けていた。

だから「マヂカルラブリーが漫才か漫才じゃないか論争」みたいなものが起きている時、純粋に腹が立った。そんな不毛な論争を煽るメディアも嫌だったし、その問いに対する答えがどんなに冗談まじりのものであっても論理的であっても、誰にも答えて欲しくなんかなかった。

あの時マヂカルラブリーのことを否定した人は、一生ちゃんと否定し続けて欲しいし、何かをきっかけに掌なんて返して欲しくもない。報われない努力をし続けて掴んだ栄光に、誰がケチをつけられるというのだろうか。誰にもつけられないだろうよ……!