「レコメンドされてもピンとこない」の正体
ユーザーは自らが選択したコンテンツに満足した時、コンテンツへの満足と同時に、自身の選択への満足も感じている。私たちは平生、これらが一体となっていることが常であるがゆえに、どちらかが欠ければ、満足できていないと考える。すなわち、魅力的なコンテンツを推されても、それが自分の選んだものでなければ、どこか十分ではない、満足が得られないコンテンツであると感じる、コンテンツの評価そのものを下げてしまうのだ。
これはコンテンツ選択の負荷をなくしゼロフリクションをめざすサービサーに対して、人間の持つ性質が突きつける、根本的矛盾といえるだろう。
このように、顧客を囲い込むことを志向するプラットフォームは、常に顧客を満足させることができずに破綻することとなる。しかしこのことには一つの盲点がある。それはこれまで見てきたモデルに共通する、ある1つの特徴、すなわち、プラットフォームの目的をコンテンツの享受として、顧客とサービサーの関係を定義していることである。
プラットフォームの目的がコンテンツの消費である限り、ユーザーは主体的に選ぶことを求められ、それゆえに満足しないという課題が生じている。これまでみてきたサービサーはあらゆる解決策を用いてユーザーの負担を免除しようとしているが、このアプローチが解決不可能であることはすでにみてきた通りだ。
それであるならば、目的そのものを変更する必要がある。現在、このために取り組まれているアプローチは、顧客の満足の源泉を、コンテンツ消費ではなく、サービスの利用そのもの、すなわちメディア体験としようというものだ。次回以降は、こうした取り組みについて取り上げる。