「何を観るか、いつ観るか、それを買うか」を考えたくない

市場における消費者の意欲の消費は以下の3つの局面で顕著に見られる。

①利用するコンテンツの選択
②コンテンツの利用タイミングの決定
③購入の判断

こうした状況下で事業者は、消費者に面倒と感じる負担を回避させる「負担免除」戦略を志向してきた。オンデマンド映画・ネットコミック・音楽配信等におけるここ数年の新しいマーケティングモデルは、この3項目のいずれかにおける消費者の負担免除を実現している点で共通している。すなわち、

①利用するコンテンツの選択に要する、“「価値判断」の免除”
②コンテンツの利用タイミングの決定に要する、“「開始」の免除”
③購入の判断を要する、“「都度支払い」の免除”

がそれである。

いったいどういうことなのか。まずは一例として映像配信におけるサブスクリプションモデルを考えてみよう。

ネトフリ、Huluなどがレコメンド機能に注力するワケ

サブスクリプションというサービス自体が、②開始の免除と、③都度支払いの免除を実現する仕組みといえる。

ただしサブスクリプションでは、①価値判断の免除は実現しない。ユーザーが見たいコンテンツを見るためには、「自分が今見たい映画は何なのか」を、頭を働かせて考えなくてはいけない。

このためサービサーは、選択意欲の低いユーザーのコンテンツ選択の負担が軽くなるよう、何らかの方策を講じる必要に迫られることになる。

現状ではサービサー側が「いま見るべき作品」をレコメンドすることでニーズに対応しており、それがオリジナル作品の制作・提供の動機となっている。

オリジナル作品の制作は入会促進が目的と見られがちだが、実際にはオリジナル作品のアピールは入会後の会員にこそ強く視聴訴求されており、比重としては既存会員へのサービス向上が主と考えるべきだ。

NetflixもHuluもともにオリジナル作品の制作に注力する一方、それによるコスト増のために会費を値上げせざるを得ない状況に陥っており、度が過ぎれば自分で自分の首を締めかねない。

オリジナル作品制作はコスト負担が重く、安定供給が難しい。ユーザーが過度にオリジナル作品に期待する状況をつくってしまうと、期待と現実のギャップが囲い込み戦略を破綻させる要因になりかねない。