サーチファームのイーストウエストコンサルティングの室末信子社長も同様にヘッドハンターの役割が減じることはないと語る。

「欲しい人材のプロフィールがリンクトイン上に公開されているということは、競合相手も多く、企業やヘッドハンターからたくさんのオファーがいくことになる。転職を希望していない人にタイミングをはかりながらどうやってアプローチするのか、人材会社やヘッドハンターの目利きが最後に重要になるでしょう」

室末社長はリンクトインの直接的影響を受けるのは既存の転職サイトだろうと指摘する。

南 壮一郎●ビズリーチ代表取締役。1999年、米・タフツ大学卒業後、モルガン・スタンレー証券入社。香港・PCCWグループの日本支社の立ち上げ、楽天イーグルスの創業メンバーを経て、2007年より現職。

「じつは私たち人材紹介会社は転職サイトのユーザーでもあります。人材情報満載のリンクトインが登場し、しかも無料。既存の転職サイトにとっては最も手強い競合相手になるのは間違いない。有料の既存サイトを使って候補者にアプローチしても、色よい返事がなければ同じことです。お金を出してまで人を探す気はないという企業が出てきても不思議ではないでしょう」

リンクトイン本来の人脈形成機能を持たせるには、社名と職歴を公開する日本企業の社員が増加することが前提となる。この点に関して否定的見方を示すのがビズリーチの南壮一郎代表取締役だ。同社は年収1000万円以上の管理職・専門職に特化した会員制有料転職サイトを運営する。会員層はリンクトインの登録者と重なり、人材業界では日本版リンクトインとも称される。

「私は、リンクトインはビジネスSNSではなく、転職サイトだと捉えています。転職サイトに自分のキャリアを公開するメリットがあるのかは疑問。日本ではフェイスブックでさえも実名を入れない、顔写真も入れないという人が多い。ましてリンクトインに職歴まで公開すれば、周囲に転職活動をしていると思われかねない。フェイスブックのようにユーザーが増えるとは思えません」

※すべて雑誌掲載当時

(小林雄一、的野弘路=撮影)