「将来の年金額」を即答できるか

私のお客さんの中には、彼女たちの半分以下の年収でも、30歳でしっかり500万円貯めている方も少なくありません。手取りや年齢が問題ではないなら、貯金できる人とできない人の「差」とはなんでしょうか。

それは、「将来の年金額を即答できるか否か」です。

そんなことか、と思われたかもしれませんね。でも、お金を貯める行為は「将来への備え」そのものです。節約をしながらコツコツお金を積み立てていける人は、はっきりしたモチベーションや目標があるものです。

年金手帳と現金
写真=iStock.com/takasuu
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そこで私は真栄田さんと進藤さんの老後資金として必要な額を算出し、お2人に伝えました。真栄田さんは長生きの家系だったこともあり、すぐに危機意識を持ったようでした。

進藤さんにはダメ押しとばかりにコンビニで使ったレシートをひと月分取っておいてもらい、その場で月の総額を計算して見せたところ、「……めちゃくちゃ無駄っすね」と力なく笑っていました。彼がひと月にコンビニに使った金額は10万円でした。

スタバもコンビニも「禁止」しなくていい

だからといって私は、「明日からスタバもコンビニも禁止!」とは言いません。急激に絞るとストレスで爆発してしまうので、真栄田さんには毎月スタバのプリペイドカードを定額で購入してもらい、カードの金額を使い切ったらまた翌月のお楽しみに、という形にしてもらいました。コンビニで散財する進藤さんにもクオカードで同様の対応をお願いし、月に使っていい「枠」を用意しました。

「節約」や「財テク」にまったく興味のなかった2人も、必要な老後資金を知ったことでやる気スイッチが入ったようで、真栄田さんはすぐに財形貯蓄を開始。また進藤さんもiDeCoとNISAを始めてコツコツお金を育てはじめています。

そうはいってもさすがに最初の1カ月は「枠」に収めるだけでもキツそうでしたが、できた時の達成感や、お金が育っていくのが楽しくなってきたようで、今では進藤さんはお弁当を作って会社に行っていますし、真栄田さんはフリマアプリを使ってコスメの整理を始めています。

正直、収入が低くてお金が貯められない人は削るところが難しいのですが、幸いに2人とも十分な手取りがある上に、無意識の出費ばかりだったため、私としてもアドバイスのしがいがありました。効果が目に見えやすい分、2人もやる気モードに入るのが早かったのかもしれません。