冬季五輪史上最多の18個のメダルを獲得した日本だが…
北京五輪での日本選手団のメダル獲得数は冬季五輪史上最多となる「18」(金3、銀6、銅8)。国別ランキングでいうと12位だった。大会前はさほど盛り上がりを見せていなかったが、いざ開幕すると日本勢の活躍もあり、多くの話題をさらった。
しかし、そうした選手の奮闘ぶりと裏腹に、ウインタースポーツは今、厳しい現実に直面している。メダル効果で活況を呈する種目がある一方で、「限界集落」ならぬ、「限界スポーツ」に近づいている種目があるからだ。
今大会を契機に国内で盛り上がりを見せている種目の筆頭はスノーボードだ。ハーフパイプで平野歩夢が金メダル、冨田せなが銅メダルを獲得。ビッグエアでも村瀬心椛が銅メダルに輝いた。
スノボ人口は2020年時で160万人(日本生産性本部「レジャー白書」)。ピークだった2002年の540万人から大幅に減少しているものの、今冬、日本人選手の活躍で注目度が急増している。読売新聞(2022年2月19日付)によると、50以上のメーカーの板やウエアなどが並ぶ専門店「Liberty(リバティ)」(東京都千代田区)では、昨年同時期より客足が3割ほど増加。平野歩夢モデルの板などに予約が相次いでいるという。また各地のスノボ教室の参加者も増えているようだ。
冬季五輪は「限界スポーツ」に近づいている種目が多い
こうした五輪特需が出ることはいいことだが、実際はそううまくはいかない。各種目をクローズアップしていくと非常に“危うい種目”が潜んでいる。
日本では過疎化や少子・高齢化が進み、共同体の機能を維持するのが困難になりつつあるある集落は「限界集落」と呼ばれている。冬季五輪にも“限界点”に近づきつつある「限界スポーツ」があるのだ。
例えば、国内の注目種目であるスピードスケートとスキージャンプだ。ウインタースポーツとしての歴史は長く、存在感もあるが、両種目とも競技人口が非常に少ない。日本代表の未来を担う高校生アスリートの状況はどうなのか。令和3年度の全国高等学校体育連盟の加盟登録状況を見ると、その数字は“危険水準”に到達している。
スキー:男子1232人(274校)、女子707人(210校)
たったこれだけしか登録人数がいないのだ。しかも、スケートのなかにはアイスホッケー、スピードスケート、フィギュアスケート。スキーにはアルペン、クロスカントリー、スペシャルジャンプ、ノルディックが含まれた数になる。
平成15年度(2003年度)の加盟登録状況と比較すると、女子のスケートは231人(117校)から1.6倍ほどに増加しているが、男子のスケートは1200人(127校)から7割ほどに減少。スキーは男子が2676人(518校)から半分以下に、女子も1008人(347校)から7割ほどになっている。