日中合作映画の『再会の奈良』が2月4日に公開された。テーマは「中国残留孤児」。主人公の元警察官は中国人女性と共に奈良県にいる残留孤児を探すが、その過程で4分間セリフのないシーンが登場する。主演の國村隼さんは「僕ではなく役が勝手にリアクションする。それが大事です」という――。

出演する決め手は「脚本です」

――中国残留孤児という難しいテーマを、ときにユーモアを交えながらその家族と関わる人々の絆を描いた本作『再会の奈良』への出演は、どのような経緯で決まったのでしょうか。

©2020 “再会の奈良” Beijing Hengye Herdsman Pictures Co., Ltd, Nara International Film Festival, Xstream Pictures (Beijing)
©2020 “再会の奈良” Beijing Hengye Herdsman Pictures Co., Ltd, Nara International Film Festival, Xstream Pictures (Beijing)

【國村】ポンフェイ監督にオファーをいただいて、まず脚本を読みました。読んだ印象は、この脚本を書いたのは、ものすごくクレバーな人だな、と。歴史的な事実としての戦争、結果として中国に残留孤児が残ってしまったこと。それを大上段に構えたのではなく、母親の情愛、周囲の人々の好意という個人的な世界の中で表現している脚本でした。

日中間の大きな重い問題を扱いながら個人レベルの物語に落とし込んで、心情に沁み込んでくるような描き方をしている……。本人にお目にかかってみたら、脚本そのままのやさしい空気感を持った監督でした。それで、一緒にものを作るのは面白そうやな、と思ったんです。

この『再会の奈良』という映画は、ポンフェイという監督の人柄そのものです。

――國村さんは、国内外の多くの映画に出ていらっしゃいますけど、出演する時の決め手は何でしょうか。

脚本です。僕は、脚本は設計図だと思っています。設計図がちゃんとしていないと、クリエイティブな作業をしていっても、いいものにならない。ですから、まず脚本を読ませていただきます。

元警察官・吉澤一雄の役作り

【國村】脚本の中の世界観を感じながら、僕が加わることで、脚本を書いた人、映画にする人たちの思いがどういった形で観客に伝わるかを汲み取りながら読みます。同時に、映画館の客席に座ってこの映画を観るお客さんを、一生懸命イメージします。あとは、自分がやることに面白さを感じるかどうかですね。

――映画のビジュアルも浮かんでくるのですか。

いい脚本だと、読みながら頭の中にビジュアルが浮かんできます。小説でもそうですよね。主人公なりキャラクターがどんどん自分の中で像を結び、声が聞こえてくる。それと同じです。

俳優の國村隼さん
撮影=大沢尚芳
俳優の國村隼さん

――今回演じた吉澤一雄という人物は、どうやって役作りしていったのですか?

僕が演じた吉澤一雄は、定年退職した元警察官。妻に先立たれて、奈良に1人で暮らしています。東京で暮らしている娘とはあまり連絡をとっていない。

そんな生活の中で、たまたま残留孤児の父を持つ二世のシャオザー(イン・ズー)と出会います。娘と同じぐらいの年頃やなぁと感じて、引っかかりができてしまう。そして、彼女が実の祖母のように慕ってきた陳おばあちゃん(ウー・イエンシュー)が、日本に帰国した残留孤児の養女を探しにやって来たと知る。

『再会の奈良』
出演:國村隼、ウー・イエンシュー、イン・ズー、秋山真太郎、永瀬正敏
脚本・監督:ポンフェイ
エグゼクティブプロデューサー:河瀨直美、ジャ・ジャンクー
製作:©2020 “再会の奈良” Beijing Hengye Herdsman Pictures Co., Ltd, Nara International Film Festival, Xstream Pictures (Beijing)
後援:奈良県御所市 配給:ミモザフィルムズ
中国、日本/2020/99分 全国の映画館で上映中
【公式サイト】http://saikainonara.com

STORY
2005年、中国から陳ばあちゃんが、孫娘のような存在のシャオザーを頼って一人奈良にやって来る。中国残留孤児の養女・麗華を1994年に日本に帰したが、数年前から連絡が途絶え心配して探しに来たのだ。麗華探しを始めた2人の前に、ほんの偶然出会った一雄が、元警察官という理由で麗華探しを手伝うと申し出る。奈良・御所を舞台に、言葉の壁を越えて不思議な縁で結ばれた3人のおかしくも心温まる旅が始まる。異国の地での新たな出会いを通して、果たして陳ばあちゃんは愛する娘との再会を果たせるのか――。