「デザイナー」を廃止しショップ店員がデザインを企画する
ポイントには、デザイナーがいません。そのかわりに消費者と同じような視点を持つ同世代の従業員がデザインを企画します。また、旬の時機を逃さないよう店頭へ商品を投入するため、毎日配送を行い、細かい需要調整をしています。
このように同じ市場に対し、複数のブランドを展開することを「マルチブランド」戦略と呼びます。マルチブランドの最も大きなメリットは、ひとつのブランドが失敗しても他のブランドは影響を受けにくく、リスクを分散できる点にあります。
マルチブランドと対照的な概念が「ブランド拡張」です。すでに広く認知されているブランドを核に、他の製品やカテゴリーに展開する戦略を指します。シャープの液晶テレビブランド「アクオス」の技術を携帯電話に応用した「アクオス・ケータイ」などがわかりやすい例でしょう。既存ブランドの資源を利用できるので、ブランドを一から立ち上げるのに必要なコストを抑えることができます。うまく拡張できると相乗効果が期待できますが、逆に失敗するとブランドに傷を付けてしまうリスクも生じてしまいます。
もちろん、マルチブランドにも欠点はあります。ブランド全体として大きな価値を生みにくいこと、生産・物流の効率が悪くなってしまうことなどです。しかし、アパレル業界など嗜好の多様化が顕著になっている市場には、フィットした戦略だといえるでしょう。
※すべて雑誌掲載当時
(構成=大塚常好)