国内唯一のDRAMメーカー・エルピーダメモリが苦しんでいる。2011年中間決算の赤字額は過去最大の567億円。また、社債償還や借入金返済など4月初めまでに1700億円超の資金が必要だが、自力返済は困難な状況だ。
DRAMはPCのメインメモリなどを支える半導体。11年のDRAM市場規模は前年比26%縮小し、過去最悪の下げ幅となった。スマートフォンやタブレット端末の台頭と景気後退により、PCの需要が激減。前年に各社の大型投資が相次いだことも影響し、需給バランスが大きく崩れた。DRAMの価格も、年初に対し50%以上下落している。
今年は「ウルトラブック」と呼ばれる軽くて薄いPCの普及も見込まれ、徐々に需要が回復するとみている。だが、それでもDRAM市場は前年比横ばいかマイナスの可能性が高いだろう。
DRAM市場でシェア45%を占めるのが、首位のサムスン電子だ。同じく韓国メーカーのハイニックスが21.6%と続く。エルピーダのシェアは12.2%で3位。しかも直近1年間で1%以上シェアを落とし、4番手の米マイクロンにわずか0.1%差まで迫られている。
厳しい市場環境の中、同社に活路はあるのか。残された方法は3つある。
1つは、NAND型フラッシュメモリを製造する企業との合併だ。
サムスンやハイニックスは、スマートフォンなどに使われるフラッシュメモリも製造する。顧客企業に対し、トータルソリューションの提供が可能だ。
フラッシュメモリ市場でサムスンに次ぐ東芝との合併の可能性もないわけではない。しかし、東芝には救済する余力がないのが現状。南亜科技やパワーチップなど、台湾メーカーとの交渉をうまく進められるかがカギとなろう。
2つ目は、台湾への本社機能の移転だ。世界のパソコンボードの約8割を生産する中心市場であるうえ、税制上のメリットを享受できるのも大きい。
3つ目は、営業・マーケティング力の強化。韓国企業との間に技術力の差はほとんどない。だが、市場の動向を見極め、適切なタイミングで投資を行う余力と営業力に決定的な差がある。
価格下落が激しいDRAM市場では、25%程度のシェアをとらなければ利益確保は難しい。エルピーダに残された時間はわずかだ。