天然ゴム相場は、急速な調整局面にある。東京工業品取引所のゴム先限(さきぎり)は今年2月の史上最高値535円から続落。11月11日時点で一時248円まで安値追いとなり下落率が54%に達するとともに、2010年1月以来、約1年11カ月ぶりの安値圏まで後退した。
ゴム相場が急落している原因は、好調だった中国の天然ゴム需要が急速に冷え込んでいる部分が大きい。中国で最も天然ゴム需要の多い分野は自動車向けタイヤであるが、この新車装填用のタイヤ需要が落ち込んでいることが天然ゴム原料の買い付け減少につながっている。タイでは過去50年で最悪の大洪水に見舞われているが、天然ゴム農園には影響が出ていないため今のところ具体的な材料としてマーケットでは意識されていない。
中国の10月の新車販売台数は前年同月比1%減の152万4800台。今年5月以来5カ月ぶりに前年割れとなり、世界最大の自動車市場の鈍化が鮮明になった。今年1~9月の累計でも前年同期比3.6%増の1363万3500台と、前年比32%増だった前年と比べ急減速となっている。今後、年末にかけて販売が前年水準に達するのは難しく、前年割れが続く可能性が高い。結果、タイヤ原料である天然ゴムを中国メーカーはますます必要としなくなる見通しだ。
実際、10月以降、中国勢の天然ゴム・バイヤーらは原料ゴムの需要急減を背景に輸入契約を減らしている。さらに、一部の中国バイヤーは既存の買い付け契約を取り消す動きを強めている。特に、8月から9月にかけて高値から約20~30%も下落したため、最近はこの時期に成約された高値での契約に対して、これを破棄する傾向を強めている模様だ。
今後も中国勢による契約破棄の流れが強まった場合、それが原因となり一段と下落傾向が強まる可能性がある。この結果、タイの一部輸出業者が船積み契約として用意していた高値取引の天然ゴムの荷が行き場を失い、急速に物余りの事態に陥っている。
今後は、下げすぎの反動からそろそろ下げ止まる可能性がある。ただしギリシャ問題に続きイタリアの金融危機問題が浮上しているため、中国の景気後退要因のほかにも不透明な材料を抱えている点は気掛かりだ。
※すべて雑誌掲載当時