パスポート写真には朝刊1日分の情報量が含まれる

顔認証では、本人の顔とデータベースにある顔画像とを照合して、同一の本人かどうかを判定することについてはすでに述べたとおりですが、この顔画像には、どのくらいの情報が詰まっているのでしょうか。顔画像の情報量を考えてみましょう。

たとえば、パスポート用の写真を例に取ると、サイズは3.5cm×4.5cmです。画像の解像度(画像が細かいか、粗いかを表す尺度)によってもデータ量はかなり違ってきます。

画像を拡大していくと、たくさんの点が並んでいることがわかります。解像度は、こうした点が1インチ(2.54cm)の範囲にいくつ詰まっているかを表す「dpi(ドット・パー・インチ、インチ当たりのドット数)」で示します。

この解像度を仮に300dpi(1インチに300個の点が並ぶ細かさの画像)とします。すると、3.5cmには413個、4.5cmには531個の点が並ぶことになります。したがってパスパート用写真のサイズの画像には、413×531=21万9303個の点が詰まっていることになります。この点を「画素」もしくは「ピクセル」と呼びます。

一つひとつの画素は、白か黒かだけでなく、色もあります。色は赤、緑、青の3原色を混ぜ合わせて作られます。1色の濃淡が256段階あるとするのが一般的ですから、1画素ごとに、赤256×緑256×青256=約1677万色以上の中のどれかになります〔1画素の色を表す(赤=128、緑=255、青=196)の数字の組み合わせを「画素値」といいます〕。通常、私たちがフルカラーと呼んでいるのは、この約1677万色以上を指します。

これほど多くの色の違いを区別するためには、約1677万通りに表現できる情報量が必要になります。単なる黒い点があるかないかだけなら、2通りの表現で事足りますが、フルカラーの画素となると、約1677万通りの表現が必要なのです。その情報量は、コンピュータ用語で言えば3バイトが必要です。

でもこれは、たった1つの「点」の話です。先ほど見てきたように、パスパート用写真のサイズには、この点が21万9303個入っているので、結局、3バイト×21万9303=65 万7909バイト。漢字やひらがなは、1文字で2バイト必要ですから、約33万文字相当の情報量が顔には詰まっていることになります。新聞朝刊1日分が40万字ほどですから、それよりは少ないですが、それでも顔の画像にはずいぶん多くの情報が詰まっているのです。

現在の顔認証は、画像そのもの、具体的には、先ほど赤・緑・青の組み合わせのところで触れた画素値を利用しています。