各国の日本大使館前では「開国要求デモ」が

さらにこんな動きもある。各国にある日本大使館や領事館の前に多くの外国人が集まり、日本政府が続ける水際措置の緩和を訴えるデモが増加しているのだ。

出入国在留管理庁によると、日本留学への道が閉ざされてしまっている人は2021年10月1日時点で約14万7800人にのぼる(NHK、1月29日)。日本の入国ビザを取得したにもかかわらず、政府の水際対策で無効となっているためだ。ツイッターでは「OFFICIAL STOP JAPAN'S BAN」というアカウントがこの状況を受け、「日本の非科学的な水際対策に対する世界的な抗議」を掲げて留学予定者たちの窮状を発信している。

外国人による国内支出は、経済統計の上では「輸出」と同じく、外貨が得られる形となるが、目下のところ留学生を含む約37万人分のチャンスも失っているわけだ。なお、日本政府は1月下旬以降、(わずかに)87人の国費留学生の入国を認めている。

京都・清水寺へと続く参道(2015年)
写真=iStock.com/YiuCheung
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米国セントラルフロリダ大学でホスピタリティ産業経営学を教える原忠之教授は、「日本に留学する予定だった米国人大学生が数名いました。しかし、2年も『鎖国』状態が続いたので、これじゃあ全員日本に行けないまま卒業を迎えることになってしまった」と嘆く。

日本の博士課程を志望していたが…

原教授によると、こんなことも起こっているという。

日本のある大学の修士課程に合格、しかも文部科学省の奨学金を得て博士課程への進学も予定していた米国人女学生がいた。しかし、この学生も渡航できず「彼女は日本そのものについて考えることも避け、とうとう大きく方向転換して欧州の国で高給をもらって就職しました」(原教授)

彼女が仮に日本に留学していたら、優秀な人材として今後50年間にわたって日本に貢献してくれる可能性がとても高かっただろう。人材の海外流出が止まらない日本にとって、大きな損失といえようか。

海外では「オミクロン株での重症者は少ない」と見込んで、すでに経済回復に大きく舵を切った国も存在する。

例えば英国政府は「オミクロンは重症化率が低い、重篤化する患者の多くはワクチン未接種者」と見なしており、医療資源の適正化を図りながら、ブースター接種済みの市民を「コロナ以前の暮らし」に近づけるような方策をとっている。すでに6割を超える国民がブースター接種を終えたという背景もある。

さらに、海外からの入国者に対しては、自主隔離はもとより、コロナ検査の類いを全廃した。「もうオミクロンは市中に蔓延しているので、水際対策に意味を見いださない」という理由による。現在の感染者数はオミクロン株による感染のピークと比べ、3分の1程度まで減ったこともあり、強気の姿勢で臨んでいる。