なぜ日本経済は活力を失ったのか。東京都立大学経済経営学部の宮本弘曉教授は「終身雇用や年功賃金といった日本的雇用慣行が、経済成長の足枷となっている。労働市場の柔軟性をいかに実現していくかがカギとなる」という――。

※本稿は、宮本弘曉『101のデータで読む日本の未来』(PHP新書)の一部を再編集したものです。

オフィスでマスクをして目を閉じるビジネスマン
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いまだに「妻が専業主婦の男性社員」が基準

日本の労働市場の特徴として、「終身雇用」や「年功賃金」といった日本的雇用慣行があげられます。

終身雇用とは長期安定的な雇用関係のことをいいます。終身雇用が日本の雇用慣行の特徴だといわれるのは、職業人生の大半を同一企業・企業グループで過ごす人が少なくないからです。実際、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」によると、40~50歳代の男性労働者のうち、勤続年数が20年以上の者の比率は全体で4割を占めており、特に大企業では6割弱となっています。

年功賃金とは賃金が年の功、つまり年齢や勤続年数の高まりに応じて上がっていく仕組みです。もっとも、賃金が勤続年数に比例して上がるのは日本だけではありません。他の先進国でも賃金と勤続年数の間には正の関係がみられますが、日本では賃金カーブの傾きが他国よりも急になっているのが特徴です。

日本的雇用慣行のもとでは、夫が世帯主として外で働き、妻は専業主婦として家を守る世帯が基本となりました。つまり、日本の雇用慣行のもとでの標準的な労働者というのは「妻は専業主婦である男性正社員」でした。これは、高齢者や働く女性、非正社員が日本的雇用慣行の枠外の存在であるということです。