30代、40代が和菓子業界を牽引し始めた

――畑さんは2003年に高島屋に入社されて、2006年から和菓子担当に。ということは、もう15年同じ仕事をなさっている。その間に和菓子業界で変化はありましたか。

他の業界に比べると圧倒的に変化は緩やかだと思いますが、15年もやっていると、お取引先様の世代が替わってきました。30代、40代の、自分と同世代の人たちが社長になってくださっているので、だいぶ仕事がやりやすくなったかもしれません。

新店を出したり、パッケージを大きく変化させたり、商品を新しく構築したりという動きが今ちょうど出てきている。5年ぐらい前から出始めているので、そのつなぎを今、やっている最中ですけどね。

――業界の変革期に差し掛かっているのですね。

そう捉えています。しかし、まだまだ古い業界です。お付き合いのある和菓子店は1300~1400軒あるのですが、そのうちメールやSNSで発注ができるのは少数派で、手書きFAXしなきゃいけないほうが多いんです。3軒だけですが、FAXもダメで、1カ月に1回まとめて全店の注文を郵便でするという場合もある。

和菓子業界も百貨店業界もアッパーの顧客層に支えられている

――それじゃあ、和菓子屋さんが自ら商品情報をネット発信するっていうのは、なかなか難しいでしょうね。世代といえば、和菓子を買って食べるお客さんのほうはどうですか。

その世代交代はまだまだできていません。一番売り上げの多い新宿高島屋で平均顧客年齢が55歳。横浜高島屋だと65歳なんです。平均年齢ですから、それより上の年代がどれだけいるかということですよ。

僕は、和菓子業界と百貨店業界はよく似ているなと思っていて、どちらもアッパーの顧客層に支えられていて、次が育っていないんです。ヤンガーがいない。だから和菓子の次世代育成、つまりは、お取引先様の次世代を育成するということと、われわれ自身が若手を育てるということと、その先にお客様の次の世代をちゃんと囲い込むことという、製造と販売とお客様を横串で刺して、次世代に全部移行させていく必要がある。そうしないと、和菓子はつぶれると思うし、同じ課題を百貨店も持っている。

店頭で和菓子の実演販売を行った際に、小さい子供たちが喜んでいるのを見るとうれしくなるという
撮影=今村拓馬
店頭で和菓子の実演販売を行った際に、小さい子供たちが喜んでいるのを見ると嬉しくなるという

――和菓子業界全体の先はけっこう厳しいのですね。

放っておくと、そうですね。ただ、先ほど申し上げたように、お取引先様の世代は替り始めており、みなさん課題認識を持って、若い世代に向けた商品開発など、いろいろと取り組んでいます。しかしながら、それはやっぱり点でしかないんですよ。とらやさんがいくら頑張っても点でしかないので。