どんな夫婦が離婚に至りやすいのか。拓殖大学准教授の佐藤一磨さんは「これまでの研究で、低学歴、低収入の家庭であるほど離婚しやすいことがわかっています。さらに、夫婦の幸福度に着目した研究では、妻より夫の幸福度が高い場合に離婚の確率が高まり、逆の場合は離婚の確率に変化がないことがわかりました」という――。
離婚届けの上で、結婚指輪を外す人の手元
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どのような夫婦が離婚しやすいのか

有名人の離婚にテレビやネットで多くの注目が集まります。

これは「離婚」という夫婦関係の終わりに多くの人が興味を持っていることを示していると考えられます。

経済学者も例外ではなく、これまで離婚に影響を及ぼす要因についてさまざまな分析が行われてきました。

中卒者は大卒者の2.8倍離婚しやすく、低所得層ほど離婚しやすい

これまでの研究成果を整理すると、経済状況や学歴が離婚と深い関連を持つことがわかっています。

まず、経済状況ですが、どのような経済状況の家庭だと離婚しやすいのでしょうか。

私が子供の頃見ていたお昼のテレビドラマから、「離婚=お金持ちの家庭でおきる」という印象が少しあります。経済的には恵まれているけれど、夫婦関係は冷え切っていて、そこで離婚が発生するという構図です。

これに対して、同じくテレビドラマの中で「離婚=貧しい家庭でおきる」というシーンもよく見かけます。ロクに働かず、酒浸りの夫に愛想をつかせて妻が出ていき、離婚するといった場面です。

はたして実態はどちらのほうに近いのでしょうか。結論から言えば、後者です。

離婚は経済的な基盤が不安定な家庭で発生しやすい傾向があります。具体的には、持ち家がなく、貯蓄が少なく、夫の所得が低いほど、離婚しやすくなるのです(※1)

また、学歴についてですが、プリンストン大学のジェームズ・レイモ教授らの研究によれば、日本では大卒女性と比較して、高卒女性は1.6倍、中卒女性は2.8倍離婚しやすいことがわかっています(※2)

中卒者の数は日本では限られているため、ある程度割り引いて考える必要がありますが、学歴によって離婚のしやすさに明確な違いがあると言えるでしょう。

(※1)佐藤一磨(2014)「夫の失業が離婚に及ぼす影響」『経済分析』第188号, pp. 119-141.
(※2)レイモ・ジェームズ、岩澤美帆、パンパス・ラリー「日本における離婚の現状:結婚コーホート別の趨勢と教育水準格差」『人口問題研究』2005, vol.61(3), pp. 50-67.