トッピングだと1000円以上払ってしまう

恵比寿にあった「香月」には、客の細かい注文を完璧に暗記する店員がいましたが、そんな達人を育てる必要もない。おまけに食材ロスも抑えられる。とメリット尽くめ。かつての「全部入り」とは発想がまったく違うのです。これはかつてない半生の味玉、いわば飛び道具によって成立したと言えます。

しかしこれと似た形は以前から存在していました。基本メニューとは別に、他店にない魅力あるトッピングを備えるやり方。ラーメン自体は世間並みの価格でも、注文されるのは1000円以上……そんな人気店は多い。実際の客単価はその合計金額なのです。

「ラーメンは安くあるべし」という古い価値観にしばられている客でも、トッピングなのだから……と、財布の紐が緩んでしまう。これぞ価格設定のマジック。それを「特製」という形で簡素化した「青葉」は、やはりおそるべし。本当の意味で特製を真似ている店など、どこにもないのです。

券売機左上のボタンにはどんな商品が配置されているか

ラーメン屋さんに初訪問したとき、それも通える範囲のお店に行ったときは、まずはシンプルなメニューを頼んで「その店の味」を知りたいものですね(一部のフリークだけかもしれませんが)。その場合、券売機なら左上のボタン、縦書きのメニュー表なら右端にあるものを選べばよいとされています。

そこには「ラーメン」や「中華そば」など、追加トッピングされていないメニュー=デフォルトが書かれているからです。一番はじめに目が行く場所ですね。しかし、それもひと昔前の話で、現在では事情が異なります。

今は「特製ラーメン」「○○屋ラーメン」など、トッピングの多い、単価の高いメニューが主流です。もちろん利益を得る側面はありますが、実際にお得な割引価格だったり、店によってはチャーシューメンこそが看板メニューだったりするので、悪いことではありません。迷ったならそれをチョイスすればいい。ただ、デフォルトのラーメンが見つけにくかったりもします。それはそれで悩ましい。

私がある店の行列に並んでいたとき、食券を買おうとした老婦人が「味玉入りはどれかしら」と店員に訊ねていました。でも味玉入りのボタンは左上からたったの3番めだったんです。これはあまりに全体のメニュー数が多くて、読む気を削がれてしまった例。またメニュー名にこだわるあまり「○○産○○を使った○○醬油ラーメン」のように読むのに時間がかかったり、かえってわかりづらい場合もあります。

味玉
写真=iStock.com/Promo_Link
※写真はイメージです

昔は席についてメニューを眺め、ゆっくり選ぶこともできましたが、券売機が主流になった今ではそうもいきません。店へ行く前にさっと画像検索して券売機の配列を確認しておくのもひとつの手です。