慶應受験向けの塾を経営している経験から言えば、実は慶應義塾大学はただ入学するだけならそれほど難しくはない大学であるとも言える。少なくとも、都内の名門難関進学校(開成、麻布など)から入学するのはさほど難しくない。小学3年生~高校3年生まで真面目にコツコツ勉強してきた人であれば、慶應に入るのはさほど難しいことではないのである。多少、中だるみがあっても、どうにか間に合わせることができた、というケースも少なくない。
このような受験事情を知っているため、都内難関進学校から慶應に進学したタイプの学生は講師としては雇わないことにしている。むしろ、コツコツ取り組むのではなく短期間で受験勉強を走り抜けたことが分かる人材を講師として採用している。
たとえば、弊社の講師でもっとも優秀な講師は、新興宗教団体が設立した高校の卒業生である。この講師は宗教団体の“教え”をベースに授業を行うユニークな高校から、一年あまりの浪人期間を経て慶應義塾大学が進学した。このように、短期集中で受験勉強をくぐりぬけてきた志望者は信頼できる。
実際に時間あたりの仕事量が多く、授業も丁寧なので生徒からも評判が良い。また、膨大な過去問解説教材の制作なども一気呵成に進めていくので、仕事を頼む相手としても安心感がある。
一方で、都内の名門校から慶應に「都落ち」した学生は、傲慢な印象を受ける。全力を出さなくても「慶應ぐらい」には合格できたという自負心がその後に人生にも影を及ぼすのである。
未経験で「この仕事やりたいです!」と言える時代は続くのか
2つ目の特徴として、「この仕事やりたいです!」と手をあげる人材が挙げられる。
特に就職活動などにおいて顕著に見られる傾向だが、たとえば「ファンドマネージャーになりたい」「コンサルタントになりたい」など、どんな仕事をするかはさっぱりわからないのに、なんとなく字面が良さそうな職種に就きたいと考える若者が後を絶たない。
日本では以前から新卒採用慣行があったため、未経験者でも「新卒カード」を持っている場合は採用されてきたが、今後はこうした慣行も徐々に崩れると考えられる。それはなぜか?
DXが進んでいる社会においては、多くの若者が大学生活を送りながらある程度までの「経験者」となることができるようになったからだ。