「広告宣伝費」という投資を積極的にする理由

【中村】そうか。メルカリの場合、ユーザーの情報を持っているはずだし、一人当たり将来に渡ってメルカリをどのぐらい使うかを計算できる。しかも、一度顧客を獲得できれば、継続的に使ってもらえる可能性がある。だから、1ユーザーの獲得から得られる収益はその場限りではなく、場合によっては複数年に渡って効果があるんだ。それと広告宣伝費を比較すれば、広告宣伝費を使って顧客を獲得した方が、コスパがいいということか。

【宮田】だからメルカリはたとえ広告宣伝費で赤字を出してでも、顧客の獲得のために、広告宣伝費という投資を積極的にしているのです。ちなみに、中村さんはメルカリをどのぐらい使っていますか?

【中村】そういえばもう3年以上使っていますね。

【宮田】中村さんのような顧客がいれば、メルカリの事業は将来キャッシュフローを生み出せますね。

なぜメルカリは赤字事業を切らないのか

【中村】メルカリの赤字の要因はわかりましたけど、2020年6月期の調整後営業利益は黒字なのに、なんで当期純利益は赤字になったのでしょうか?

【宮田】メルカリの事業の3本柱は、メルカリ、アメリカ事業、メルペイです。その中で、メルカリでキャッシュを稼ぎ、アメリカ事業とメルペイに資金を分配しています。

【中村】いわゆる集中と選択の観点では、メルカリ事業に絞ってもいいんじゃないですか?

【宮田】そこがメルカリのすごいところです。並みの会社だとそう考えるはずでしょう。でも、メルカリはさらなる成長を考えているようです。図表3を見てください。中村さんは、コンサルでよく使われるプロダクト・ポートフォリオ・マネジメントって知っていますか?

【中村】前に本で読みました。PPMというやつですよね。確か、横軸に相対的市場シェア、縦軸に市場成長率をとって、マトリックスで考えるフレームワークですよね。

【宮田】それぞれの事業から生まれるキャッシュフローを、右下の「金のなる木」から「問題児」へ再配分し、「問題児」をできる限り「花形」に成長させることを理想とする。一方、「負け犬」への投資はできるだけ減らして、早い段階で撤退等をすることが望ましい、って感じだった気がします。

【中村】それに従うと、メルカリって今はどういう状況でしょうか。