利益とキャッシュにはタイムラグがある

【中村】利益でよくないですか? というか、キャッシュフローと利益って違うんですか?

【宮田】意外かもしれないけど違います。中村さんは学生時代にバイトをやっていましたか?

【中村】はい。コンビニ、カフェ、家庭教師とか、ひと通りやりましたね。

【宮田】たとえば4月1日からバイトを始めたとして、給料はいつもらえましたか?

【中村】う~ん。カフェのバイトは月末締めで翌月25日払いだったな。ってことは5月25日か。その間、交通費は自腹だったからバイト代をもらえるまで結構辛かったなぁ。

【宮田】今の感覚が利益とキャッシュの違いです。企業の視点では、4月にバイトに働いてもらったら、5月に支払う給料であっても、4月の時点で費用を計上します。他方、バイト代をもらう立場となる中村さんが個人事業主だとしたら、4月で締めた時点でバイト代を売上高に計上できるのです。でも、実際にお金をもらうのは5月25日。ということは、実質4月と5月の約2カ月間お金が入ってこないことになります。つまり、利益は数字上ですぐに記録されるのですが、リアルにキャッシュが手元に入るのは少し先なので、タイムラグが生じるということです。先ほどの黒字倒産の話と少し似ていますね。

なぜメルカリは赤字なのに営業CFが125億円もプラスなのか

【中村】そうでした! バイトを始めてから最初の給料日まで結構時間があって、日雇いバイトですぐに給料をもらえるバイトは重宝しました。

【宮田】この単純な例でも、利益とキャッシュが違うのはもちろん、今手元にあるお金、キャッシュに注目する重要性がわかりますね?

【中村】はい!

【宮田】では、早速メルカリのC/Sの営業CFを見てみましょう。メルカリの税引前当期純利益は205億円の赤字ですが、営業CFはプラス。すなわちキャッシュを生んでいます(図表2)。

【中村】これ私の読み間違えでなければ、メルカリの営業CFって125億円もあるということですか? 税引前当期純利益は205億円の赤字で、営業CFは125億円もプラスって、何が起きてるんですか?

【宮田】さっき、当面メルカリは倒産しないと言ったカラクリがここに隠されています。細かい科目はわからなくてもいいですが、この中で大きい数字はどれかわかりますか?